Episode:68
「お久しぶりです、先輩」
しゃねぇから、俺は台所から出た。
先輩がちょっとだけ、考え込む。
「えーと、イマド、だっけ? たしかセヴェリーグと同室だったと思ったんだが」
「ええ、イマド=ザニエスです」
やっぱこの先輩すげぇ。
俺とこのクーノ先輩、仲がよかったわけじゃない。ただセヴェリーグ先輩のことは、クーノ先輩はそれなりに知ってる。でもそんだけで、同室だった俺のことまで覚えてるとか、とんでもねぇ記憶力だ。
この記憶力俺にも分けろとか思いつつ、先輩に説明する。
「先輩、今南のほう、列車止まってんの知ってます?」
「ああ、聞いた、テロらしいね。――なるほど、それでか」
この先輩、頭いいからそれだけで、ある程度分かっちまったらしい。
「だがそれにしたって、なぜ走竜でこっちへ? そもそも、どこへ行くつもりだったんだい?」
「元々は、ケンディクから海渡って南回りで、ルアノン行くつもりだったんですよ」
先輩が頷いた。
「なるほど、あの国境の町か。で、列車が止まったから走竜と。それにしても、ルートといい軍用の走竜といい、謎だらけだな」
けど先輩が不思議がってたのは、そこまでだった。
「まぁその辺はあとで、ゆっくり訊かせてくれ。今はともかく荷物を降ろして、この人の手当てだ」
「あ、はい」
言われてルーフェイアと2人、慌てて荷物持ちに走る。
「やっぱり弾が残ってるのか……出さないとダメだな」
俺らが荷物運んでる間に、先輩はロジーヌおばさん診てた。
「そんなに深くないから、ここで出せるか。ナーエさんすみません、部屋を貸してください。それからベッドに、汚してもいいタオルとシーツを」
「はいはいはい、すぐ出しますからね」
ばあちゃんが奥へ走ってく。
その間にクーノ先輩は、うとうとしてるおばさんに声かけた。
「起きられますか?」
「え? あ……えーっと」
おばさん、状況が把握できなくてきょとんとしてる。
「僕は医者です。と言っても駆け出しですが。それで、あなたの撃たれたところなんですが、弾が残ったままなんですよ」
「弾? あーそれじゃ、出さないと……」
ぼんやりしながらもそう答えるとか、このおばさんやっぱ、見かけより修羅場くぐってそうだ。




