Episode:67
「けどよ、こんなの店持ってきゃ、1日ありゃ直すだろ」
「店ならそうだけど……」
言ってルーフェイアが、石を手にとった。
「でもふつうはこれ直すの、魔方陣……描くとこからだし」
「そーいやそうか」
俺はやらねぇから頭っから抜け落ちてたけど、言われてみりゃ手順としては、まず魔方陣からだ。
店が早いのは、よく使う魔法陣は常設してあるからで、一から描いたら大騒ぎだろう。たしかにそう考えっと、ムチャクチャ効率いいかもしんない。
けど今は、そんなん議論してる場合じゃないわけで。
「おばさん、直ったんでこれ、テキトーなヤカンに放り込んでいいです?」
ばあちゃんって言ったらさすがに怒られそうだから、台所のヌシを「おばさん」って呼んでみた。
「あれ驚いた、もう直ったのかい。先生さんといいあんたたちといい、やっぱりシエラのお人は違うねぇ」
「いや、そういうワケじゃないですよ? 俺とこいつだけです」
慌てて否定する。学院生だから誰でも出来ると思われたら、なんか色々面倒ごとが起こっちまいそうだ。
「あれ、そうなのかい? んじゃ壊れたときに、先生さんに頼むのはダメだねぇ」
――やっぱ考えてたし。
クーノ先輩のことそんなに詳しく知ってるワケじゃねぇけど、炎石直せねぇのは確定だ。つかそんなにホイホイ直せたら、学院内で生徒が自前でやってる。
「ともかくありがとさんね。さて、水汲もうかね」
「あ、俺が」
こんなばあちゃんに重いもの持たして、ひっくり返ったらヤだし。
「あれ済まないね、いい子だねぇ。そしたらここへ――」
そのとき、玄関のドアがノックされた。
「すみません村長、開けてください」
「あれ、医者さんだ」
ばあちゃんが、いそいそと玄関を開けに行く。つかここ、村長ん家だったらしい。
入ってきたのは優しい感じで、たしかに見覚えがある人だった。ばあちゃんが医者さん言ってるし、これがクーノ先輩だろう。
「こんな時間にすみませんね、先生。あの人なんでもね、撃たれてここまで逃げてきたって言うんですよ」
言いながら、ロジーヌさんのほうを指差す。
「ちょっと熱もあるみたいで、今寝てますけど……診てやってもらえませんかね?」
「ええ、もちろん。そのために来たんですから」
言いながら先輩、ちらっとロジーヌさん見て、少し表情変えた。
「ちょっと荷物、持ってきます」
「あ、手伝います」
ルーフェイアが声かけて、先輩がぎくっとした顔になる。完全に気配消してた上に死角に居たから、気づかなかったらしい。




