Episode:65
「医者さん、すぐ来るからね。ここの先生は若いのに、ホントすぐ駆けつけてくれてありがたいことだよ」
ばあちゃんが自慢げに言う。
話に出てきた「若い先生」ってのは、クーノ先輩のことだろう。学院にいるときはあの先輩、お人好しってのでも有名だったけど、今も変わってねぇらしい。
「悪いけどあたしゃ、ちょっとお湯沸かしてくるからね。その人看といてもらえないかね?」
「あ、俺手伝います」
パンとスープ、急いで腹に詰め込んじまって立ち上がる。
「あぁ座ってなさいな。お客さんにそんなこと、させるわけにいきませんて」
「でも、人手要りますよね?」
そういって、半分強引に台所に入る。
「火、起こしますよ。炎石どこですか?」
「あれ済まないね。これなんだけどね、どうも最近調子が悪くて」
おばあさんが炎石を差し出した。
「なかなか熱くならなくてねぇ」
「見てみますね」
ありふれた炎石だ。
昔はわざわざ火を起こしてたらしいけど、今そんなことする家なんてない。この炎石をテキトーな網にでも入れて、鍋の中へ放り込んで、簡単な合言葉で開放。たったそんだけで、アツアツの煮物やらスープの出来上がりだ。
ただこの魔力石、ずっと使ってっと、書き込んだ呪がダメになったりする。
石の中を覗き込むと案の定、書き込まれてる呪文が弱くなってた。
「――ルーフェイア、ちとこっち来い」
「え? うん」
いちばん魔法に長けたヤツを呼ぶ。
「えっと……何?」
「ほら、こないだやったろ、重力の魔法を石に書き込むヤツ。覚えてっか?」
ルーフェイアが頷いた。
「あれと同じやり方で、この炎石直すから、なんか小さいの唱えてくれっか?」
「分かった」
言ってルーフェイアが、辺りを見回す。
「今、ここで……だよね?」
「ああ。でも、なるべく威力小さくな。家でも焼いたらシャレになんねぇ」
「あ、じゃぁ、そこの流しの中で……」
いちばん危なくなさそうな場所を、ルーフェイアが指し示す。
「んじゃ、その中へ頼むわ」
言ってこいつの手を掴むと、嬉しそうな顔をした。こういうとこがすげー可愛い。
「えっと、じゃぁ魔法……」
「あらあらあら、二人とも可愛いねぇ」
作り直そうってとこで、いきなり後ろから声かけられた。ここのばあちゃんだ。




