Episode:61
「そんなのが積み重なってね、結局あの強制移住さ」
「そうだったんですか……」
イヤな話だ。つかたまたま持ってたものを、権力者が気に入ったからひどい目に遭わされるとか、たまったもんじゃない。
けど大体の場合、やられる側は反撃のしようがないわけで。それ考えると、ほとんどイジメって言っていいくらいだ。
――どうやったらあいつら、とっちめてやれんだろな。
やりたい放題で周りじゅう泣かしといて、自分は安全な奥の院とか、腹立ってしょうがねぇ。
そんな俺の隣で、おばさんばぽつりと言った。
「まだ約束、覚えててくれるかねぇ……」
半分諦め調子の、でもどこか期待してるような声音。
「約束って、何なんです?」
「昔の約束さ」
自嘲するみたいに言った後、おばさんは説明してくれた。
「ほら、さっき言ったろ? レデは山から、塩と交換で薬草だのを手に入れてたって。だから、その交換条件さ」
「交換条件?」
ちょっと内容がピンとこない。
おばさんの説明が続く。
「そ、交換条件さ。そういうものを受け取って売りさばくってことは、危ない橋渡ることでもあるからね。だから、レデが立ち寄ったら受け入れる。そういう約束があるんだ」
「なるほど……」
山奥の村がレデに薬草や原石を託したのは、塩と交換だけじゃなくて、村を守る意味もあった。
逆に言えばそれは、レデのほうが危なくなるってことだ。事実レデはそれが原因で、こんだけヒドイ目に遭ってる。
それをせめて埋め合わせるための約束事だったんだろうけど……。
「まぁ、あれからずいぶん経ってるし。きっと誰も覚えちゃいないだろうね」
つぶやく言葉に、俺は何も返せなかった。
大丈夫だとか、きっと覚えてるだとか、言やいいのかもしんない。けど言ったとこで、事実はだいたい、イヤになるほど過酷だ。だから、安直なこと言えねぇ。
それを知ってかおばさんがため息ついたあと、でっかいあくびした。
「あーなんだ、眠くてかなわないね」
「寝てていいですよ。その走竜、勝手に俺についてきますから」
微熱があるんだから、ここまで起きてただけでも十分すごい。
「すまないね、じゃぁ少し寝かしてもらうよ。縛っといてもらってよかった」
それから少しして、規則正しい寝息が聞こえてきた。具合が悪くなってたらヤバいと思ったけど、単に疲れただけみたいだ。




