表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/182

Episode:60

「坊やじゃ知らないだろうけど、この山道抜けりゃ、ほんとにすぐノネ湖なんだよ。だから休むんだったら、そこへ行ってからのほうがいいね。軍の連中もそこへは滅多に来ない」

 どうやらノネ湖周辺ってのは、秘境に近い扱いされてるっぽい。世界最大級で、水も澄んでんので有名だけど、行くにはちょっと遠いからだろう。


「ずっと昔はね、夏になるとレデの人間があそこまで、塩なんかを届けたんだよ」

「へぇ……」

 遊牧民が交易もしてたなんて、初耳だ。

 俺が不思議そうにしてんのに気づいたんだろう、おばさんが話し始める。


「あたしらにとっちゃ、山の上だって夏は放牧地さ。ただね、行きゃそこの村と、いろいろ関わりが出るだろう? だから、塩を持っていって安く売ったんだよ」

 たしかに山の上じゃ、岩塩が取れねぇとこじゃ、塩の確保は大問題だ。だからそれを安く売ってくれるってんなら、少々のことにゃ目をつぶる。


「んでもって、代金にゃ山の上で割と簡単に手に入る、宝石の原石や薬草をもらってたんだ。どこから手に入れたかは内緒にする、って条件でね」

「なるほど……」

 上手いこと考えたな、と思う。


 辺境じゃ、お金ってのは案外手元にないもんだ。特に昔じゃ自給自足だから、余計にそんなもの持ってない。

 けど薬草だの原石だのってのは、辺境ならそんな貴重品じゃない。それが塩に代わるうえ、出所も伏せといてもらえるなら、相手も願ったり叶ったりってやつだ。


「どこから買ったか内緒ってのは、採れる場所知れたらヤバいからですよね?」

「もちろんさ。どっちも町へ持ってきゃ高価なもんだ。それが採れる場所が分かっちまったら、たちまちでっかい国が軍連れて、奪いに来るからね」


 要はそこだ。

 戦争なんてだいたいは、何か欲しいものがあるヤツが居るから起こる。そいつが直接攻め込まなくても、周りが「このままじゃやられる」と思えば、先手打って攻撃に出る。


 ――何でそんなに、いろいろ欲しいんだろな。


 俺みたいに親も家もなくて、シエラで面倒見てもらえて万々歳なヤツには、その辺がさっぱり分かんねぇ。

 そんなこと思ってる俺をよそに、おばさんがため息ついた。


「ただその約束が、レデを滅ぼしちまったんだよね……」

「そうなんです?」

 これも初耳だ。


「ほら、レデってのはあちこち移動するだろ? だからね、国とか持ってる連中からは、胡散臭く思われてる。それが高価な宝石だの薬草だの持ってて、しかもどこで手に入れたか言わなかったら、どうなると思う?」

「あー、そういうことですか」


 そういう時たいていの人は、どっか取れる場所を隠してるか――盗んでると思う。

 加えて普段から胡散臭く思われてる、流浪の民だ。どこの権力者だって、締め上げんのをためらったりしないだろう。むしろヘタすりゃ、人気取りに使えるくらいだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ