Episode:06
「だいじょうぶ……?」
「あー、うん」
口ではそう言いながら、イマドが椅子に座り込む。けっこう辛そうだ。
「これ……」
「あ、サンキュ」
差し出したジュースを一気に飲んで、やっと彼が息をついた。
「どうしたの?」
「わかんね。部屋入ったら、急に頭痛くなっちまってさ。でも収まった」
よく分からないけど、何だか嫌な話だ。
「もしかして……船酔い?」
「船酔いなら、気持ち悪くなるんじゃね? つか、降りなきゃ治んねーだろ」
「あ、そっか……」
今だって船は動いてる。だからもし船酔いなら、むしろひどくなるはずだ。
「風邪って感じでもねぇしなぁ。なんつーか、魔力炉の横、通ったときっぽいってか」
「魔力炉……」
現代の動力は、だいたい2種類。魔力石を利用したものか、魔方陣で魔力を集める「魔力炉」だ。
ただ魔力炉のほうは、一般的とはとても言えない。たしかに扱える魔力は大きいけど、不安定なうえに整備も面倒で、相応の技術が要るからだ。だから魔力石を作るとか、かなり特殊な用途でだけ用いられてる。
それともう一つ問題なのが、魔力に敏感な人が近寄ると、体調を崩すことだ。
魔力炉を扱うには魔力に敏感なほうがいいのに、そういう人は長時間そばにいると、9割以上が寝込んでしまう。
原因は、魔力の流れをあり得ない形で長時間、変えるからだと言われてる。
ふつうの人だとそこまで感じないから、同調することはない。けど敏感な人はその異常な流れを感じ取って、身体の中のエネルギーまで引っ張られる、ってことだった。
そしてイマドは、あたしたちなんかよりよっぽど、魔力には敏感だ。
「船に、魔力炉ってあったっけ……?」
「ふつうはねぇな。ただ、積んでる船もあるかもなー」
彼は軽く言ってるけど、本当だったら大変だ。早く船を降りないと、旅行どころじゃなくなる。
「船、止めるわけにいかないだろうし……船長さんに言ったほうが、いいかも……」
「落ち着けよ。つか、船長さんだってンなこと言われても困っだろ」
至極まっとうなことを、困ってる本人のはずのイマドが言う。
「でも、このままじゃ!」
「だから落ち着けって。つか、ヘンなんだよ。部屋から離れたらあっさり治っちまったし、ここじゃほとんどその手の気配しねーし」
たしかにそれはヘンだ。
船がもし魔力炉を備えてるとしたら、それなりの規模になる。だったらちょっと船内を移動しても、影響からは逃れられないだろう。




