Episode:57
「でも、間違ってたら……」
「だからそれ自体、やってみなきゃ分かんねぇって。
イマドの答えは変わらなかった。
「つかさ、あそこで考えてるのが、いちばんヤバいだろ。だからどっちでもいいから、出るのが正解じゃね?」
「あ……」
指摘されて気づく。
たしかに最悪の選択は、あのままあそこに居ることだ。だから急いで離れたこと自体は、間違ってない。
問題は、その際選んだことが、どういう結果を生むか分からないことで……。
「しゃーねぇよ、誰にも先のことなんて分かんねぇんだし。可能性の高いほう、その場で選ぶっきゃねぇって」
「――うん」
イマドの言うとおりだ。
どちらか選ばなきゃいけないんじゃなくて、選ばないことを避けなきゃならなかったんだから、動いたことは間違ってない。だとしたらあとは、何としてもやるしかなかった。
「あたし、前へ出る」
「そか? んじゃ頼むわ。さすがに走竜連れてじゃ、俺も警戒しきんねぇから」
イマドが少し左へ避けてくれて、その脇を通って前へ出る。
「……お嬢様?」
気が付いたジマリが振り向いた。
「何か、ご用ですか?」
「ううん、違うの」
急いで否定して説明する。ここで誤解されたら、あとが大変だ。
「その、イマドが警戒、走竜連れてじゃ大変だって……だから、あたしが代わったの」
「あ、そうでしたか。なんか、いろいろすみません」
「気に、しないで」
本当はもっといい言い方があるはずだけど、上手く言えない。
ジマリはどう取ったのか、それ以上は言わなかった。
――気を悪くしてたら、どうしよう?
そんなことばっかり気になる。
けど今は他に、気を配らなきゃならないことがある。だからあたしは考えを押しのけて、周囲の気配を探るほうに集中した。
本当はイマドが適任だけど、あたしも出来ないわけじゃない。そもそもこれが出来なかったら、前線で生き残ってない。
それに気配を探るは、もうずっとやっているから、あまり負担にならなかった。何より夜は暗いおかげで、自然とそっちの感覚が研ぎ澄まされるから、昼間よりずっと楽だ。
そうやってしばらく進んで……もうこのまま目的地まで行けるだろうと思えてきた頃、あたしは気配を捉えた。




