Episode:56
「すいません、我慢してください」
「いいって言ってるじゃないか。早くしとくれ、すぐ出発するんだろ」
おばさんが気丈に急かす。もしかしてこのメンバーの中でいちばん、肝が据わってるんじゃないだろうか?
謝りながら、ジマリが落ちないように縛り付けた。
「痛くないですか?」
「大丈夫だよ。さぁ、あたしのことはもういいから、あんたたちも早く支度をおし」
おばさんに言われて、あたしたちも身支度する。といっても走竜から降りただけだから、荷物をチェックして乗るだけだ。
最後にバティス君がジマリの膝に乗っかって、すべて整った。
「お嬢様、行きましょう」
言ってジマリが走竜を走らせ、イマドとロジーヌさん、あたしの順で続く。
けど少し行ったあたりで、ジマリが走竜の速度を落とした。
あたしと併走するようにして、こっちを見る。ちょっと困った感じだ。
「どうしたの?」
「いえ、その……お嬢様、ルートはどうしましょう?」
一瞬飲み込めなくて、考える。
「ルートって……変えるってこと? 出来るの?」
「ええ、変えるのは出来ます。ただ遠回りになります」
「そうなんだ……」
でも当たり前だ。行き先が決まってるんだから、取れる道も限られる。
決めなきゃいけなかった。時間をかけてでも安全に行くか、危険を承知で最初のルートを取るか。
少しの間頭の中で検討して、決める。
「――最短でお願い。でも危ないところだけは、迂回して」
「分かりました」
ジマリの走竜が離れていく。その背を見ながら、ちょっと負担かなと思った。
今決めて言ったことに、自信があるわけじゃない。あたしの決めたことは実は間違いで、みんなを危険に晒すかもしれない。そう思うと、息苦しくなってくる。
と、振り向いたイマドと、視線が合った気がした。こんなに暗くて分かるわけないと思うけど、そう感じた。
すっ……と、イマドの走竜が寄ってくる。なのにロジーヌさんの走竜はそのまま進んでる辺りは、素直にすごいと思った。ふつうは一緒に来てしまうか、手綱を放されて迷走してしまう。
「だいじょぶか?」
すぐ隣まで来たイマドが、小声で言った。
「――うん」
本当は違うけど、そう答える。あたし自身のことなのに、いちいち彼まで悩ませたくない。
けど。
「どっち転ぶかなんて、やってみなきゃ分かんねぇって」
あっさりと見破られた。




