Episode:53
「バティス!」
「ママっ!」
走竜からバティス君が滑り降りて、おばさんのところへ駆け寄った。
「ケガしたの? 痛くない?」
「ああ、大丈夫だよ」
どう考えても大丈夫じゃないのにロジーヌさん、バティス君の前で笑ってみせる。けどその笑顔で、バティス君は安心したみたいだった。
「どこに、居たんだい?」
「よく……分からない。ママの言うとおり、林の中に居たから……」
その頭を、イマドが撫でた。
「偉いなお前。ママの言うこと守ったから、ちゃんと助かったし」
「……うん」
褒められたバティス君、ちょっとだけ嬉しそうだ。でもその顔はすぐ、悲しそうに沈んだ。
「けど、ママが……」
こんな小さい子にしてみたら、自分のせいでお母さんが怪我したなんて、耐えられないんだろう。
「だいじょうぶだよバティス、ちょっと怪我しただけさ」
心配させまいと、ロジーヌさんが笑顔を作る。
けどその左腕は動いてなかった。傷の程度がどのくらいか分からないけど、早く医者に診せたほうがよさそうだ。
「ジマリ、ここからいちばん近い医療施設は?」
「ここから……ですか? だったら、元の町に戻ったほうが」
「それはムリ……」
逃げ出してきた町に戻るなんて、出来るわけがない。
「他には?」
「でしたらやっぱり、行こうとしてた町ですね。急げば今日中に着くかと」
他に選択肢はないみたいだ。
ただ、行けるかどうか心配だった。最初の状態ならともかく、今はロジーヌさんが怪我してる。なのにそこまでの強行軍をしたら、傷が悪化して、最悪死んでしまうかもしれない。
――どうしよう。
安全策を取るか、先を急ぐか、決めなきゃいけなかった。
考え込む。けどそれを、おばさんの声が破った。
「先へ、行かせとくれ。あの町に戻るなんて……それに戻っても、医者なんていないんだ」
「え?」
言っている意味が分からなくて、ジマリのほうを振り向く。
「あー、えーとですね。西地区の住民は、医者に診てもらえないんです」
「どういうこと?」
いくらなんでも、話がメチャクチャだ。
彼が話し出す。




