Episode:51
魔法で血が止まったところで、改めて傷を確かめると、背中を撃たれたみたいだった。
――あとで、取らないと。
体内に弾を残したままじゃ、いろいろとまずい。
けど、今は止血が先だ。何とか持たせて、手近な医療施設まで運ばないといけない。
最寄はどこだろう、そう考えてるあたしの前で、おばさんが起き上がった。
「ダメです、動いたら」
「バティスを……」
ふつうじゃ動けないはずなのに、おばさんが立ち上がろうとした。すごい精神力だ。
「バティス君、どこへ?」
「走竜に乗せて、林の中へ……」
こんな怪我をしながら子供だけは逃がすなんて、「お母さん」はさすがだ。
「俺が探します」
言ってイマドが、走竜を林の奥へ向けた。
「ルーフェイア、お前、おばさん頼む」
「うん」
イマドの言葉を聞いた瞬間、おばさんがへたり込んだ。
「大丈夫ですか?」
「ああ、うん、すまないね」
さっきは必死で夢中だったんだろうけど、今はもう動けなそうだ。
とりあえずおばさんに魔法をかけて軽くして、茂みの奥へと連れて行った。あんな林の入り口じゃ、捜索されたらその場で見つかる。
「すみません、ここで合流して、それからじゃないと……これ以上、治療は」
「いや、いいよ。あの子さえ無事なら」
お母さんって本当にすごいな、と思う。傷が痛むし苦しいはずなのに、自分のことなんて二の次三の次だ。
「ねぁアンタ、バティス、見つかるよね?」
「え、あ、はい」
必死の形相で訊かれて、思わずうなずいた。
本当のところを言えば、見つかるとは言い切れない。この林を出て行ったかもしれないし、あの兵士たちに捕まった可能性だってある。
けど心配するロジーヌさんを思うと、とてもそれは言えなかった。
「きっと、大丈夫です。彼、探したりするの得意なので」
嘘じゃない。けど、本当でもない。
イマドが人を探し出すのが上手いのは、本当だ。けどその彼だって、探し出せるとは限らない。
それを……あたしは言えない。
「息、どうですか?」
話をそらす。
「あぁ、うん、大丈夫だよ、ただ左手が……」
だけどこれなら、肺やなんかは大丈夫そうだ。