Episode:49
人が使うものと違って、魔力石が放つ魔法は外からの誘導に弱い。内蔵の魔力石同士でも、干渉を起こすことがあるくらいだ。
そんな繊細で脆いものだから、きっかけがあれば簡単に壊れる。壊す手段を持つ人が少ないから、問題になってないだけだ。
そして魔力を扱うのは、イマドの得意技だった。病院テロの時も、アヴァンでの継承騒動の時も、彼は難なくそれをこなしてる。
だから彼にしてみれば、車をはじめ魔力石を使った道具は、格好の獲物だろう。防壁がついてない限り、外からやり放題のはずだ。
――あとでうちの魔道具、全部防壁つけよう。
そんなことを思う。
万一イマドみたいな人が、他にも居たら大変だ。うちは戦地で使うものが多いから、即座に命にかかわる。
「あの、お嬢様、いいんですか?」
ジマリが訊いてきた。
「何人も居るのに、あの少年一人で……」
「彼なら大丈夫。早く」
心配するジマリを急かす。
正直この彼を連れて戻っても、邪魔になるだけだ。イマドだって引き際は分かってるし、一人のほうが思いっきりやれて楽だろう。
なにより彼は撹乱系だから、ヘタに手を出さないほうがいい。
「こっちでいいのよね?」
「はい」
ジマリに確かめながら林の中を走って、あたしたちはすぐに走竜が繋がれた場所へ着いた。
「え……」
たしかに走竜は居た。けど3頭だけだ。最後の1頭と、ロジーヌさん親子が見当たらない。
「どこへ……」
分散してはいけないときに、分散する。最悪だ。
きっと、わざとじゃないと思う。状況を知らないまま、散歩にでも行ったんだろう。けどそれが今、とんでもない事態を引き起こそうとしてた。
「ジマリ、どこへ行ったか分かる?」
走竜を繋いでいたロープを解きながら、訊く。少し考えて、ジマリが答えた。
「たぶん、草原です。ここの西は、ママナ家が冬を過ごす場所ですから、見に行ったんだと」
「分かった、案内して」
イマドが乗ってた走竜のロープも、答えながら解く。
「あ、あの、それ解いたらまずいんじゃ……?」
「イマドなら、呼べるし探せると思う」
走竜を手綱なしで従えて、デルピスと話すくらいだ。たぶん昔の古代人と一緒で、呼ぶくらいできるだろう。




