Episode:46
あたしの思いを他所に、走竜は走り続ける。単調な足音と揺れ以外は、たまに夜鳥の声が聞こえたり、何か小動物が横切ったりするくらいだ。
みんなは無言だった。最初はロジーヌさんとバティス君の話し声が聞こえてたけど、それもいつの間にか無くなってる。それにあたし自身、闇の中ちゃんと付いていくだけで精一杯で、他の走竜に乗ってる人と喋る余裕なんてなかった。
そうやって、どのくらい走っただろう? 先頭を行くジマリがスピードを落とす。
「どうしたの?」
「休憩入れます。走竜も走らせっぱなしじゃ、持たないので」
言って彼は、小さな林の脇で走竜を止めた。
あたしも続いて止めて、走竜から降りると、ジマリが手綱を引き継ぐ。
「林の中で、休ませませんと。着く前にバテます」
「うん、お願い」
彼が走竜を林の中に隠して、ロジーヌさんも続いた。
イマドは、乗っていた走竜の首筋を叩いただけだ。でもそれだけで、走竜が黙ってロジーヌさんの後をついていく。
茂みの脇に隠れるようにして座ると、隣にイマドが来た。
「……すごいね。走竜、言うこと聞くんだ」
「一応な。可愛いぜ、あいつら」
イマドの声は、ちょっと嬉しそうだ。
「そうなの?」
「ん。なんつーかな、ちゃんと表情あるし、人間の話けっこう聞いてるしな」
弾む声に、きっとこういう動物たちが、彼の友達だったんだろうと思う。
「動物、好きなんだ」
「まぁな。あいつら人間みてぇに、しょうもねーこと考えねぇし」
人当たりのいいイマドだけど、見てるとそれほど他人に執着しない。上手に付き合ってはいるけど、居なければ居ないで平気な顔だった。
理由はきっと、彼が周りと「違いすぎる」からだろう。正直物事がこんなに違って見えてたら、同じように考えることなんてムリだ。
そして代わりに、走竜なんかと話してたんじゃないかと思う。
「他にも仲のいい動物とか……居るの?」
なんとなく訊いてみる。
「学院の周りの海とか、けっこうデルピス居るだろ? あいつら楽しいぞ。一緒に泳いだりできっし」
デルピスというのは大型の海洋動物で、学院の周りの海でもよく見かける。でもあの生き物と、一緒に泳げるだなんて思いもしなかった。
「頭いいからな、あいつら。マジでこっちの言うこと細かく分かるぜ」
「そうなんだ……」
あの生き物がそんなに頭がいいなんて、思いもしなかった。
「今度、紹介してやろっか?」
「え? あ、うん」
思わず答えたものの、いまいちピンとこない。そもそも動物に紹介してもらって、どうなるんだろう?




