Episode:45
外は光に慣れた目には、とても暗かった。街中と違って街灯もないから、ほんとに暗さが際立ってる。
振り返るとさっき後にしてきた市街地が、煌々と光を放って浮かび上がっていた。
「どのルート、通ります?」
「ルートって言われてもなぁ。北西へ行って東、としか」
ずいぶん大雑把だ。
「そんなんで、だいじょぶなんです?」
さすがに不安そうなイマドの質問に、答えたのはロジーヌおばさんだった。
「心配しなくていいよ、レデのいつものルートだから」
「そうなんですか?」
驚いて訊くと、おばさんが答える。
「氏族によって多少は違うんだけどね、春から夏にかけて北上して、西か東へ夏の間移動して、秋にかけて南下するんだよ。だからレデの人間なら、みんなあの説明で分かるのさ」
どこか寂しそうな声なのは、昔を思い出してるんだろう。
「にしても、よく地図もねぇのに分かりますね」
「そんなもの要らないよ。レデは山とか丘の形でね、居場所が分かるのさ」
すごいな、と素直に思う。
前線でも位置を確認するのに、辺りの地形を使うことは多い。でも地図と照らし合わせて、やっと分かるだけだ。
それを地図もなしにやれるなんて、人が自然の中に置いてきてしまった能力を、レデの人たちは今も持っているんだろう。
(これなら、案内要らなかったんじゃね?)
(イマド!)
小声で言った彼に、さすがに釘を刺す。確かにそうかもしれないけど、言ったらダメだろう。
「ジマリ、行くよ。あんた道は覚えてるんだろう?」
「ええ。忘れたらレデじゃないですから」
おばさんとジマリは、意気投合だ。
「あんたたち、ジマリの後ろからお行き。あたしは最後尾につくよ」
「分かりました」
ゆっくりと走竜を走らせ始めた、ジマリの後に続く。順調なら今夜中走って、明け方頃に休憩。仮眠して夕方から走り始めて、明後日の朝頃に目的地に着くはずだ。
走竜もそんなに頭が悪いわけじゃないから、どうすればいいか分かったらしい。あたしが何もしなくても、ジマリの後ろをついていく。
見上げると、星空が綺麗だった。
街中じゃ見られない、本物の星空だ。どこまでも遠い闇夜に、掴めそうな星たちがまたたいてる。
不思議だった。
この星空も青空も、国が違っても変わらない。だいいち地面に、国境が描いてあるわけでもない。
なのになんで所属が違って、しかもそのせいでロジーヌさんやバティスくんみたいな目に、遭う人が居るんだろう?




