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Episode:44

「おい、乗るぞ」

 イマドが声をかただけで走竜が身体を低くして、その背に難なく彼は乗またがる。


「これは驚いた……お前さん、古代人の血でも引いとるのか?

「らしいです。っても親居ないんで、よく分かんなかったりしますけど」

 アヴァンでドタバタしたときもそうだったけど、イマド、ふつうの人とはだいぶ違う。そしてその理由は、古代人の血が強く出たんだろう……っていうのが結論だった。


 かつての世界を席巻した古代人は、魔力の扱いにとても長けていて、魔法を我が物としていた。だから今でも、その時代の技術が残ってる。

 その一つが、走竜だ。

 走竜そのものは、元々古代人が使っていた。言い伝えじゃその当時は手綱なんかなくて、精神力だけで従えてたらしい。


 たださすがにそれだと、古代人でも乗れる人が限られてしまって、考案されたのが「制約」の呪文だ。

 けっこうむずかしい呪文なのだけど、古代人の精神波はそうとうだったらしくて、誰でもかけられたって言う。


 ただその後古代人は数を減らしていって、走竜を扱える人も減っていき、代替として考え出されたのが手綱だった。

 他にも今の時代、かつて古代人が自分の魔法と精神力でやってのけていたことを、魔道具で何とか代用しているケースは多い。


 逆に言うと、もし今でも古代人が居たなら、走竜を手綱ナシで操るだろう。だからそれが出来るイマドは、先祖がえりでほぼ間違いない。

「どちらにしてもこれなら、心配はないの。何かあったらお前さん、走竜たちに言い聞かせとくれ」

「はい」


 話を聞きながら思う。これってもしかして、あたしたちの手綱も要らないんじゃないだろうか?

 手綱を使って操れるのは、手綱に触ってる分だけだ。だから乗ってると頑張っても、併走するもう1頭が限界だった。


 なのに今おじいさん、「走竜たち」って言ったわけで……聞き違いじゃなければ、イマドが乗ってない分」にも命令できる、ってことになる。


「今回は道案内も居るし、走竜をまともに扱える者も居るし。心配なさそうじゃ」

「ほんとですね」

 お爺さんとお婆さんが、嬉しそうに言う。貸す相手が気楽だと、きっと言いたいんだろう。


「じゃぁあとの皆さんは、手綱をかけたのへ。うちの走竜はどれも、よく走りますぞ」

 お爺さん、まるで自分の子供を自慢してるみたいだ。

 みんながそれぞれ走竜――バティス君だけはロジーヌさんの膝の上――に乗ると、お爺さんが戸を開けた。


「ご武運を」

「ありがと」

 短い言葉だけ交わして、厩舎を後にする。





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