Episode:43
「あーでも、今日は行かなきゃダメなんで……」
「あぁ、そうだったねぇ。じゃぁ今度、改めて遊びにおいで」
料理の話が流れてほっとする。
あたしとイマドだけならいいけど、今日はロジーヌさん親子が一緒だ。早く発たないと、状況がどう変わるか分からない。
「じゃぁ、行きますかな?」
「うん、お願い」
あたしの言葉にうなずいて、お爺さんが裏口を開けた。すぐ先に、家より大きな厩舎が見える。
中は薄暗かった。ほんのわずかに魔光灯の光があるけど、とても十分とは言えない。これじゃふつうの人は辛いだろう。
「明かり、強く……できないの?」
「申し訳ありません、お嬢様。そうすると外から何をしているか、分かってしまいますので」
たしかにそうだ。町から離れてるからそう簡単には見つからないだろうけど、用心するに越したことは無い。
「あたしらなら大丈夫だよ、お嬢ちゃん。それに外へ出りゃ、明かりなんてないからね」
おばさんが気を遣ってくれたんだろう、そんなことを言う。
爺さんがその間に手綱を取ってきて、手際よく走竜たちにつけ始めた。
「そちらの魔力石に、手をかざして下され。そうすれば、皆さん方が登録されますんで」
「えっと……こう?」
言われたとおりにすると、魔力石がほわりと光った。
「へぇ、こりゃ面白いね。ほら、お前もやってごらん」
おばさんに言われてバティス君も手をかざして、嬉しそうに笑った。
「光ったー!」
「うんうん。んじゃあたしもやるかね」
それからおばさん、ジマリと続いて、イマドだけになる。
「ほら、お前さんも」
「えーと俺、手綱要らないんで……」
視線が一斉にイマドに集まった。
「要らない? 手綱が?」
「あ、はい。んー、見たほうが早いか」
言ってイマドが、1頭の走竜に歩み寄る。ひときわ身体が大きくて、しかも凶暴そうだ。
「お、お前さん、それは……」
「だいじょぶです」
お爺さんの心配を余所に、イマドが走竜に手を伸ばす。
「なんと……」
走竜が怒るでもなく、黙って触らせた。




