Episode:41
「え、でも、危ない……」
「行き先さえ分かりゃ、俺のほうがたぶん見えてるんで」
2人を見ながら、多分イマドの言うとおりだと思う。
シュマーの人間は全般的に夜目が効くけど、イマドはどういうわけか、それ以上に見えてる感じだ。
逆にジマリは、それほど見えてる感じはない。それにレデの出身って事だから、何かの理由でシュマーに拾われたはずだ。だからシュマーの血は引いてなくて、夜目もふつうの範囲なんだと思う。だったらどう考えても、イマドが先導するほうがいい。
でもジマリは、納得しなかった。
「やっぱり、俺が行くよ。お嬢さんの連れに先頭行かせるなんて、知られたらなんて言われるか」
仕方なく、間に割って入る。
「ジマリ、イマドに行かせて」
イマドもジマリも、言ってること自体は間違ってない。だからこそ平行線で、放っておいたら押し問答になるだけだ。
「彼、かなり見えるの」
「あ、はい、分かりました」
ジマリが先頭を譲って、イマドが歩き始めて……すぐ立ち止まって、肩越しに振り向いた。
「真っ直ぐは行かないんで、すんません、ゆっくり行くからついてきてください」
「分かったよ」
言ったとおりイマドが時々進路を変えながら、ゆっくり歩き出す。その後ろをジマリ、バティスくん、ロジーヌさん、あたしの順で続いた。
暗さに目が慣れてきてるから、周りの様子は大体分かる。そして確かによく見ると、穴や岩の脇を通るルートになっていた。
――どういうふうに、見えてるんだろう?
視力がいいか悪いかだけでも、世界の見え方はずいぶん変わる。それがイマドみたいにこんなに違ったら、考え方まで変わってきそうだ。
イマドみたいな人は、シエラに他に居ない。だから当然、イマドは分かってくれる人なんか、どこにも居なかったわけで……。
強いな、と思った。
あたしは周りにシュマーの面々が居ても、落ち込んでばかりだ。けどイマドはひとりきりで、それでも平然と生きてる。少し見習わないとだ。
もっともその前に、あたしなんて助けてもらってばっかりで、見習うどこじゃ無い気がするけど……。
そんなことを考えてるうちに、建物が近づいてきた。
がっちりした高い柵は、牧場の印だ。これがないと、肉食の竜に家畜は襲われてしまう。その隣の平たい建物は、厩舎と管理人の住まいだろう。
閉められた鎧戸の隙間から、明かりが漏れてた。中の人は、まだちゃんと起きてるみたいだ。




