Episode:40
「そのあとようやく、収容所からは出られたんだけどね。遊牧しようにも家畜はいないし走竜も居ない。ついでに無一文。しょうがないからみんな、政府に言われた場所に住んだんだ」
それで今の、西地区に住むようになったんだっていう。
「ただそれもね、全員じゃないんだ。やれあっちの町だの向こうの町だの、なるたけ氏族がバラバラになるように、政府が名指しで住む場所言ってきてね。けど断りゃまた収容所だから、みんな泣く泣く従ったんだよ」
そうして「遊牧民のレデ」は、消えてしまったんだそうだ。
「どこに居るかとか、ぜんぜん分かんないんですか?」
「分からないね。なんせレデだと分かると密告されたりするから、誰も口にしないしね。あたしだってここを逃げ出すと決めてなきゃ、言わなかったさ」
遊牧民の人たちが置かれてる状況は、予想以上らしい。
「これから、どうするんです?」
ジマリに訊かれて、おばさんが肩をすくめた。そのやり方が、ちょっとリオーネさんと似てる。
「まぁとりあえずは、死んじまったダンナの両親とこさね。あの人らもレデだから、何とかなるだろうよ」
どうやらロジーヌさんの旦那さんも、レデの人だったみたいだ。
「ふつうは言わないって、さっき言ってませんでした? なのに、よくそこにいるって分かりましたね」
イマドが訊くと、ジマリもうなずいた。やっぱり不思議だったんだろう。
「ああ、それかい? 収容所から出たあと、ずっと生き別れてたんだけどね。でもあの人が仕事を手伝いに行った先で、偶然姿を見かけたんだ」
人違いかもと思いながら、旦那さんはどうしても気になって追いかけて、再開を果たしたんだって言う。
「まぁ、よっぽど運が良かったんだろうね。じゃなきゃ、そこで使い果たしたんだろ」
おばさんのちょっと突き放したような言い方は……旦那さんが亡くなってるからだと思った。おばさんにしてみれば両親が見つからなくてもいいから、生きてて欲しかったはずだ。
「でもほら、ダンナさんのおかげで、疎開する場所があるんだし。良かったじゃないですか」
沈黙が怖かったのか、必死に言うジマリに、おばさんがクスクスと笑った。
「そういうことにしとくかね。で、小屋は遠いのかい?」
「もうすぐですよ。あの木の脇のところ、見えます?」
ジマリが指差す。
闇の中目をこらすと、確かに何か建物が見えた。ただ、まだもう少し歩きそうだ。
「この先、足元気をつけてくださいね。けっこうデコボコしてるし、道なんかないんで」
「あ、んじゃ俺行くわ」
言って、すっとイマドが前に出た。




