Episode:04
「それにしても、よく入れましたな」
「え? 開いてましたけど……」
「開いていた?」
聞き返される。
「だって船長さん、開いてなきゃ俺ら入れませんよ?」
イマドの答えに、船長さんが考え込んだ。
「確かに……だがおかしいな。客室は最後に点検したあと必ず閉めて、乗客がキーで開けるはずんなんだが」
どうやらホテルと同じで、鍵をもらって初めて入るのが普通らしい。
「誰か閉め忘れたとか」
「うーん、今までなかったんだが、そうかもしれないな」
ちょっと訝しがりながらも、船長さんも同じ結論になったみたいだ。
「誰も居ないはずの部屋から通話があったんで、驚きましたよ。しかも慌てて乗客名簿を確認したら、もう手続きが終わっていたし」
「すみません……」
ほんとにあたしたち、いろいろ手を煩わせてしまった感じだ。
「いやいや、無事乗船いただけて何よりです。ところで、何の御用でしたかな?
訊かれて考え込む。何だったろう?
覚えてたのは、イマドのほうだった。
「ここってメシ、どうなってるんですか? 俺、腹減って」
船長さんが笑い出す。
「食べ盛りだからねぇ、そりゃお腹空くだろう。私も君くらいの頃は、それこそ1日に7食は食べてたよ」
――どうやるんだろう?
朝と昼と夜で3食、それにおやつと夜食を足してもまだ足りない。ともかくすごい量だ。
「食堂は、開くまでもう少しかな。出航後には開くよ。あとは売店で買える。ただ夜中までだから、それまでに買わないとだ」
食料の手に入れ方が分かって、イマドがほっとした顔になる。
「食事は何時にするかい? その時間になったら、係りの者が迎えに行くよ」
「あ、じゃぁ、開いたらすぐで!」
イマドが即答したあと、あたしのほうを見て、「しまった」という表情をした。
「悪りぃ、お前、明るいうちに海見るんだよな」
「え? うん。あ、でもほら、明日もずっと船だし……」
自分でも何を言ってるんだかよく分からない。
ともかくイマドに、早くご飯を食べさせてあげたかった。この船がワサールに着くのは明日の午後だから、海は今じゃなくてもいい。
そんなあたしの頭に、イマドがぽんと手を置いた。
「えーっと、んじゃ日が暮れたらで」
「イマド!」
思わず声が高くなる。
イマド、いつだってそうだ。あたしにばっかり気を遣って、自分のやりたいようにしない。




