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Episode:39

「お嬢様、行きましょう」

「そうだね」

 見送るリオーネさんとカールプを背に、あたしたちは歩き出した。走竜の小屋はこの町外れから、もう少し郊外へ行ったところにあるっていう。


 案内役は、あのジマリという男の人だ。

 ちょっと軽い感じだけど、カールプが言うには彼、土地勘は抜群なんだとか。それに走竜の扱いも、かなり上手いって話だった。

 あとはロジーヌさん親子と、あたしとイマド。計5人だ。


「ホントにおばさん、1人で走竜乗れんですか? 小屋着いてから『やっぱり乗れない』って言われても、困りますよ」

 ロジーヌさんが、ジマリを睨んだ。


「おばさん?」

「あ、いえ、お母さん……」

 さすがに貫禄がありすぎて、「お姉さん」とは言えないらしい。


「フン、まぁいいとするかね。走竜ならあたしゃ乗れるよ。なんせ、ここらのレデの出だからね」

「え、どこの氏族です?!」

 ジマリが勢い込んで訊く。


「俺、ロデナ氏のドロテロ家で」

「なんだって! あたしゃヨームのママナ家だよ」

 どうやらこの2人、親戚……とまではいかなくても、似たような出身らしい。


「レデって、なんです?」

 イマドが横から訊くと、おばさんが答えた。

「ああ、あんたたち外から来た人は知らないか。レデってのは、この辺で暮らしてた遊牧民のことさ」


 どうりでおばさんもジマリも、走竜が扱えるわけだ。

 牧畜で生きてる人たちは、広大な土地を走竜で駆けて家畜を追う。だから小さな子でも、ヘタな軍人より走竜の扱いが上手い。


「……まぁ、もう居ないがね」

「え?」

 おばさんが大きくため息をついて、話し出した。

「ロデスティオの連中が来て、レデを全員捕まえて、無理やり収容所に閉じ込めたんだよ。スパイに違いないってね」


 メチャクチャだ。

 遊牧民は、たしかに国境なんか関係ない。少しでもいい草を追いかけて、草原中を旅してる。だからもしかしたら、そういうスパイをする人もいたかもしれない。

 でも全員捕まえて、強制的に移すなんてやりすぎだ。


「何年になるだろう……10年以上居たかね? そりゃぁひどかったよ。食べるものさえロクになくて、みんな飢えて死んでった。あたしの弟や妹も、みんな死んじまったよ」

 下に何人いたか分からないけど、一番大きくて体力があったおばさんしか生き残れなかったなんて、どれだけひどかったんだろう?




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