Episode:33
「どこまで行くかわかんねぇのに、手綱の魔力が途中で切れたら、シャレじゃすまねぇぞ?」
俺は元々手綱要らない変り種だけど、ルーフェイアはそうは行かねぇはずだ。
そこへ、横からおっさんが口を挟んだ。
「ご心配なく、うちの走竜は軍用と同じでございます」
さらりと言われた内容に、思わずため息つく。
「ったく、どこまでケタ外れてんだよ」
「どこまでって……ふつうじゃ? じゃないと、イザってときに……困るし」
ダメだ。感覚そのものがズレてっから、話自体通じてねぇ。つーか、軍用なんて異常に金かかるもの、常備してる時点でどうかしてる。
まぁその辺、「シュマーだから」って言われたら、それまでだけど……。
「ねぇ、軍用とふつうのって、何が違うの?」
詳しく知らねぇんだろう、お姉さんが訊いてきた。
「んー、いちばん違うのは、手綱のとこですね。時間切れ、ないんですよ」
「へぇ……それ、便利すぎない?」
「ええ。でももちろん、勝手には使えませんけどね」
お姉さんが、がっかりした顔になった。何考えてたんだか。
「やっぱり、ダメなんだ」
「当たり前ですよ。つかそうじゃなきゃ、盗られ放題になりますって」
そうじゃなくたって武器とか盗まれたりすんのに、走竜までなんてたまったもんじゃない。
軍用の走竜も、「制約」の呪文で従えてんのは一緒だ。んでそれを持続させんのに、手綱が要るのも一緒だ。
けど軍用の手綱は、魔力を増幅させる機能だけ持ってて、魔力自体はない。要するにただの増幅器だ。
その代わりに、制約の呪文の中に「使役者」が書き込まれる。んでこの「使役者」と違う人の魔力が供給されっと、暴れだす仕組みだ。
まぁ実際には使役者は1人じゃなくて、何人かまとめて書き込むけど。つかそうじゃねぇと、使役者に何かあったとき、誰も走竜に触れなくなっちまうし。
ただともかく軍仕様ってなら、行き先の距離とかは気にしなくていい。
「んじゃどっか使える港探して、そこまで走竜で――」
「別に、港じゃなくていいんじゃない?」
言いかけた俺の言葉に、お姉さんの声が重なる。
「港じゃないって、どこ行くんです?」
「駅よ、駅。列車に乗るの」
不思議に思って訊き返すと、くすくす笑ってから、お姉さんが答えた。
「長距離列車、確かにこの辺は止まってるけど。たしか北のほうなら、動いてるって聞いたわよ?」
「あ……」
指摘されて、初めて気が付く。ンなこと全然思いつかなかった。




