Episode:32
「これじゃマジで、学院にも戻れねぇな」
「どうしよう……」
町から出られさえすりゃ、あとはテキトーな僻地でシュマーの船出してもらうなりで済むけど、そこにさえたどり着かないんじゃお手上げだ。
それに何より、この近くの港全部が、見張られてる可能性もある。
「他の町とか、どのくらい見張られてます?」
俺の質問に、お姉さんは肩をすくめた。さすがに外の情報は入ってこないらしい。
代わりに答えたのが、おっさんのほうだった。
「手持ちの情報では、この近隣は小さな村まですべて、特に港は見張られているようです。ですから船を出すにしても、相当離れないと無理かと」
「あー、やっぱそうですか」
条件がかなりきっつい。
徒歩で夜にこっそり出りゃ、町を出るだけは出られるだろうと思う。けど港が使えるとこまでったら、どんだけ歩きゃいいんだか見当もつかねぇし。
「歩きじゃ、ムリだろなぁ」
「無理だと思う……」
ルーフェイアが同意する。
それに歩くったって、この状態じゃおそらく道路はダメだ。いくらも行かないうちに見つかって、最悪射殺コースだろう。
暗いとこ、辺りに警戒しながら道じゃねぇとこを延々歩くとか、さすがに願い下げだった。
「軍用車でも、出す?」
「ムチャだろ。つか不審者扱いで殺されっぞ」
確かにそれなら道じゃねぇとこ行けっけど、それだって限界がある。森の中なんかは通れねぇから、見つかる可能性は高かった。
「じゃぁ……走竜? 町外れで、飼ってなかった?」
「あぁ、確かにそれなら。用意いたしますか?」
さすがシュマーだ。とんでもねーものまで持ってる。
ルーフェイアが、確認するみたいに俺のほうを見た。
「……いい?」
「いいぞ。けどそれ、手綱だいじょぶか?」
走竜に手綱は、必須だ。これがないと、大惨事になる。
巨鳥もそうだけど、あの手の乗獣は「制約」の呪文で制御してる。ホントだったら従ったりしない性質だけど、呪文なら強制服従だ。
ただこの呪文、当たり前だけど時間が経つと威力が弱まったり、切れる。で、昔はよく暴れて大騒ぎになったらしい。
それを解消したのが、手綱のシステムだった。
まず走竜や巨鳥に、制約の呪文をかける。んで乗るとき必ず使う手綱に、魔力石を組み込んでおいて、掛けた魔法を持続させる。
こうすれば魔力石の力が続く間は、問題なく乗れる寸法だ
ついでにせっかく盗んでも、魔力石を調達してちゃんと組み込めなきゃ、いつか暴れだす。だから走竜の盗難防止にも役立ってた。




