Episode:31
「私もこの町、長いのですが。かつてはお嬢様がいらっしゃるケンディクのような、いい町でございました。ですが占領されてからは、ちょっとでも目立つと、占領軍やロデスティオ政府に目をつけられる有様でして」
そこで一回、おっさんは言葉を切った。下を見てる灰色の瞳が、なんか悲しそうだ。
「うちはそれでも、商売の規模が大きいから何とかなっておりますが。ただ弱いところから、徐々に徐々に焼かれていって、庶民は生きるのもやっとでして」
お姉さんの話と、ほぼ一緒だ。だとすると、やられてる側が誇張してるとか、そういうワケじゃないっぽい。
「なんとか……ならないの?」
ルーフェイアの問いに、おっさんは首を振った。
「我々だけでは、とても。何より、この国の話ですから」
「けど……」
必死に食い下がるルーフェイアを止めたのは、お姉さんだった。
「気持ちはありがたいけどお嬢ちゃん、この人の言うとおり。あたしたちで何とかするわ。それとね――」
ちょっとだけ言いにくそうに、言葉を切る。
「この町出ること先に考えたほうが、良さそうよ。当分列車も船もダメらしいわ」
「マジですか?」
さすがにこれにゃ俺も驚いて、思わず聞き返したけど、答えは同じだった。
「ホントよ。仕事仲間が聞いてきたって、通話石でほんの今しがた、流してきたわ」
仕事仲間とやらがどこで聞いたかは……なんとなく想像がつく。けどこの期に及んで、真昼間からもぐりこんだ挙句情報漏らす兵とか、はっきり言って銃殺モンだ。
「当分って……どのくらい、ですか?」
ルーフェイアに訊かれて、お姉さんが肩をすくめた。
「さぁ? 全く予定立ってないらしいから、かなり先かもね」
どうやらこの町、しばらく完全封鎖らしい。
そうなると俺ら、ルアノン行くどころか、学院に帰ることさえ出来ないわけで。泊まるところはあるにしたって、最悪の状態だ。
「イマド、どうしよう……」
ルーフェイアの心配そうな顔。
「どうしようってもなぁ。車調達するくらいっきゃ、ねぇんじゃね?」
「あー、それダメ」
俺が言ったことを、お姉さんが即座に否定する。
「検問厳しいって、さっきも言ったでしょ? 今はきっと、それ以上だと思う」
「――あ」
こうなってくると、マジでヤバイ。
「道路はみんな、押さえられちゃってるし。そこへ船も列車もダメじゃ、食料の心配したほうがいいくらいよ」
「ですね……」
さすがに食料の輸送はそのうち許可されっだろうけど、ここから出るほうは容疑者探しがあっから、当分ムリそうだ。




