Episode:30
「分かったわ、お茶だけ飲んでく」
野郎のほうは有頂天だ。
「ありがとう、リオーネ! お茶淹れてくるよっ。あ、その前に中へ!」
俺たちを招き入れて、野郎は奥へ引っ込んだ。それこそお茶入れにいったんだろう。
椅子にかけたお姉さんが、部屋の中を一通り見回してから、口を開く。
「それにしても、あなたたちがジマリと知り合いなんて。まぁあたしもお客多いから、言われてみればあり得るんだけど」
さっきから客って言ってるけど、その客の意味が少し違うよな……なんて思った。
つか、シュマーの隠れ家預かってるヤツが、こんなとこと無造作に知り合でいいのか?って思う。この手の職、スパイだって居るはずだってのに。
野郎のほうは、じきお茶乗せたトレイ持って戻ってきた。しかも初老の、割と品のいいおっさんと一緒だ。
「お嬢様をお連れ下さったそうで、ありがとうございました。後ほど正式に、お礼をさせていただきます」
おっさんがお姉さんに、丁寧に頭を下げる
「え? やだ、そんなのいいのよ。ちょうど近くだったんだもの」
堅っ苦しいのは苦手みたいで、お姉さんが両手を振って言い訳した。
「それにほら、こんな美味しいお茶いただいちゃったし。あ、じゃぁ、このお茶の葉頂ける? うち、ちょうど切れちゃって」
お姉さん、上手いこと切り抜ける。
おっさんも言いたいことは通じたみたいで、にっこり笑ってうなずいた。
「では、そのように致します。それからお嬢様、申し訳ありませんでした。この町に来ているとは、まったく存じませんで……」
おっさんがまた頭を下げる。なんかすっげー真面目で律儀な人だ。
「ううん、いいの。あたしも最初は、乗り換えるだけのつもりで、知らせなかったから」
ホントだよな、と思った。俺ら単純に、船から列車に乗り換えるだけだったはずだ。なのにテロ騒動に巻き込まれて、挙句に逃げ回るハメになってんだから、笑うっきゃねぇ。
「……ごめんなさい、驚かせて」
それからルーフェイアのヤツが、真剣な顔でおっさんに訊いた。
「この町、何が起こってるの?」
「連続テロでございます」
同じくらいまじめくさった顔で、おっさんが答える。けどこれじゃ、答えになってねぇし。
ルーフェイアも同じこと思ったらしくて、次の質問を口にした。
「それは……ちょうど、見たの。じゃなくてこの町、何が起こってるの? このお姉さんから聞いたけど、なんか誘拐とかあって、メチャクチャだって……」
「あ、そちらの件でございますか。ええ、仰るとおりひどい有様です」
おっさんが嘆息する。




