Episode:29
「やぁね、会いに来るわけないでしょ。あなたが来てくれなくちゃ。今日は人を連れてきたのよ」
にっこり笑って言ってっけどお姉さん、内容がすっげー強烈だ。全力でお断りしてる。
ただ野郎のほうは、メゲたそぶりはカケラもなかった。
「ひどいなぁ、そんな言い方しなくたっていいじゃないか」
んでもって、馴れ馴れしくお姉さんの肩に手かけようとして……固まる。
「ぐ、ぐ、ぐ、グレイス様っ?!」
思いっきり後ろへ飛びのいて、野郎がペコペコ謝りだした。
「すすす、すみませんっ! 小さくてらっしゃるから、いらっしゃるのに気づきませんで!」
謝ったつもりなんだろうけど、どう見たってさらに墓穴だ。
「……ひどい」
気にしてること言われたルーフェイアが、小さい声で言う。
「わわわわわ、申し訳ありませんっ、そういうつもりじゃ!」
呆れて物が言えねぇ。つか、喋るときはもうちっと考えろ。
お姉さんのほうも、処置ナシって顔で肩すくめた。
「まったく、相変わらずよねー。それにしてもお嬢ちゃん、やっぱりいいとこの子だったのね」
「え、あ、その、あたし別に、そんなのじゃ……」
まぁ確かにルーフェイアの言うとおり、「いいとこ」違いだろう。
でも説明しようもないから、結局誤解はそのまんまだ。
「あらごめん、じゃぁ知らなかったことにしとくわ。で、ゴールはここでいいのよね?」
「はい。ありがとうございます」
ルーフェイアの答えに、お姉さんが満足そうに笑ってうなずく。
「良かった。じゃぁあたし戻るわ」
「ちょっと待ってくれリオーネ、せめてお茶でも」
野郎、必死すぎだ。
「要らないわよ。お茶が飲みたいなら、あたしの家へ来ればいいわ」
お姉さんのほうは、その気ゼロだし。
そんでも野郎、食い下がる。
「そんなこと言わないで、上がってくれ。じゃないとお嬢様連れ来てくれたのに、俺が怒られる」
「怒られるって、あなたねぇ。もう少し気が利いたこと言えないの?」
俺も同意だ。女誘うのに、同情引くとか情けなさすぎる。
でもルーフェイアのほうは、ちょっと違ったらしい。
「あの、あたしからも……お願いします」
真剣な顔で、お姉さんに訴える。ただそのあとが凄かった。
「じゃないとあとで、探し出してお礼する人が……出るので」
悪気はねぇんだろうけど、どう見たって半分脅してるし。
このコンボに、お姉さんがため息ついた。




