Episode:02
「何やってんだ?」
「あ、うん。ほら前、この船でウィンが……」
この間は船に乗ったら、あの子が何故か紛れ込んでいて、大騒ぎだった。
イマドが笑い出す。
「そーいやそうだったな。けどまぁ、今回は俺らだけだろ」
「うん」
答えながら、なんだか急にどきどきしてきた。
――どうしよう。
今までだって何度も2人でケンディクへ来てるし、任務なんかもこなしてる。けどいつだって平気だった。
それとも、「遠出」だからだろうか?
でもそれなら、シーモアたちを追いかけた時だって、最初は2人だけだったし……。
「ほら、ともかく乗るぞ」
自分でも良く分からなくて悩んでたら、イマドから急かされた。
「あ、うん、ごめん」
急いでゲートを通って船に乗って、割り当ての部屋へ向かう。
「……相変わらずあの執事、いい部屋取るなぁ」
「そぉ?」
客船ってこんなものだと思うけど、違ったんだろうか?
「えっと、部屋……変える?」
心配になって訊くと、またイマドが笑い出した。
「いいって。つか変えんな。せっかくいい部屋なんだし」
そう言われてほっとする。別にこの部屋で、問題はないらしい。
「あー、やっぱ高級品だなー」
ベッドの上にダイビングしながら、イマドが言った。身体が大きいから、壊れないかちょっと心配だ。
「てか、悪りぃな」
しばらくごろごろと転がった後、彼が起き上がって、急にまじめな顔になる。
「えっと……なにが?」
「んー、なんてかな。タカるみてぇでさ」
たかるって何だったろう……としばらく考えて、思い出した。たしか他人のお金をアテにして、出してもらうことだ。
けどこの場合、違うんじゃないだろうか?
「その、だって、変えたの……こっちだし」
何しろイマドの叔父さん、あたしの旅費も出すって言ってたのだから。けど話を聞いたドワルディ、何をどうやってどう話したのか分からないけど、うちが旅費を持つようにしてしまった。
で、予約されてたのがこの部屋だ。たぶんあたしに、気を遣ってくれたんだろう。
「だからその、気にしないで……」
こんなことでイマドが気を悪くしたら、どうしよう? そればっかりが心配だ。
そんなあたしに、彼が軽い調子で言った。
「んじゃ、目いっぱい世話になるわ。いい物食えるチャンスとか、滅多にないし」
「あ、うん、そうして」
そのほうがあたしも気楽だ。