Episode:172
「ホントそれ考えっと、マジで終わりにしたくなるわ」
「イマド……」
さっきあたしにああ言っておいて、自分はこんなこと言うのだから凄い。
でも、そういうものなのかもしれない。生きていけば行くほどみんな誰かの事を思って、なのに自分勝手だ。
どうしようもない矛盾。自分が磨り減っていく気がする。
それでも将来の夢とかそういうのがあれば、耐えられるのかもしれないけど……そんなものがないあたしたちには、辛い。
それにもし夢をみてても、ある日どこかで事実に気づいてしまって、動けなくなってしまいそうだ。
正直、何のために生きて何のために大人になるのか、全く分からない。
「あー、居た居た」
覇気なんてどこかへ置いてきたあたしたちに、遠くから声がかかった。ヘイゼルお姉さんだ。
「すぐって言う割りに遠くへ行くから、どこまで行ったのかと思った」
着いたばかりなのにお姉さん、ずいぶん元気そうだった。イマドの言うとおり、アヴァンで観光できて嬉しいのかもしれない。
そのお姉さんが、あたしたちを見て表情を変える。
「だいじょぶかい、あんたたち」
「心配ねーよ」
イマドがいつものように軽く答えた。
「それよりさ、ルアノンどうなった? ここに居るとよくわかんねーんだよな」
うまい事話を違う方向へ持っていく。
「ルアノンなら、何とか平穏だよ。っても、男連中しかまだ家に戻ってないけどね」
町は今も無事らしい。朗報だ。
「ほら、最初の砲撃ん時に、あんたたちが出てくれたろ? その被害が予想遥かに超えてたらしくて、進撃に二の足踏んでね」
話を聞きながら、向こうの兵隊さんも可哀想だなと思った。どんな被害が待っていても、命令があったら行かなきゃならない。
「まぁ向こうさんだってバカじゃないから、国境付近の基地襲った部隊と合流はしたんだけどね」
「それで平穏って、どーゆーことだよ?」
イマドが不思議そうに訊く。
でもあたしも同感だ。部隊が増強されてるのに狙われてる場所が平穏って、もう何が何だか分からない。
あたしたちの様子が面白かったのか、お姉さんが笑った。
「アヴァンの部隊が、ギリギリ間に合ったんだ」
「あ、それで……」
頭の中で答えが繋がる。
◇あとがき◇
新作を読んでくださって、ありがとうございます♪
【夜8時過ぎ】の更新です、たぶん。でもかなり大雑把にしか決めてません。頑張らないと(汗)
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