Episode:17
それにしても気になるのは、「なんでこんな物を仕掛けたのか」だ。
何をどう言ったところで、この船はただの定期便で、要人が乗ってるわけじゃない。だいいち、いくらいい部屋に仕掛けたところで、予約があるとは限らない。
なのにやってるのだから、かなり行き当たりばったりだ。
「あの……ワサールって今、どうなってるんですか?」
思い切って聞いてみた。
ユリアスの政情は、いつもどおり落ち着いてる。だからこっちが原因とは、考えづらい。
逆にワサールは、去年病院テロを引き起こしたくらい、ややこしい国だ。
元は豊かな自然と資源を持つ国だったけど、拡張政策を取るロデスティオが、突如侵略。そのまま自治区扱いにされている。
ただワサール、他の併合や植民地化された小国と違って、国民の自負が強い。だからなかなか言うことを聞かなくて、今でも抵抗活動が盛んだった。
「ワサールは年明けくらいから、ちょっと不穏でね」
船長さんが話し出す。
「でも去年は……あたし行きました。楽しかったです」
「うん、去年は落ち着いてた。ただこのごろ急に、動きがおかしくなってきたんだ。だから警備も、やたら厳しくてね」
さすがに理由までは、船長さんは知らないらしい。
「君たちも、ワサールへ行くんだろう? 気をつけないと」
「はい……」
こういう言われ方をすると、ちょっと不安だ。
「どんな感じなんです、ワサール? 出来たら行く前に、少し聞かせてもらえませんか?」
イマドの言葉に、船長さんが言いにくそうに口を開いた。
「正直……今行くのは、あまり勧められないな。どうしてもの用事なら、仕方が無いが」
「いや、俺らそこから、列車に乗り換えるだけなんで」
船長さんが、あからさまにほっとした顔になる。
「それなら多分、大丈夫だ。ともかく港で船から降りたら、ホテルか駅へ直行するんだよ? 余計なところには、行かないほうがいい」
イマドと顔を見合わせる。ワサール、どうやら想像以上に酷いみたいだ。
「列車は走ってるんですよね?」
「ああ、それは大丈夫だ。だから乗り換えるだけなら、問題ないよ」
この話から全部分かるわけじゃないけど、最低限のラインは今のところ、確保されてるんだろう。
ただそれも、こんなところにまでテロが広がってることを思うと、安心は出来なかった。
去年の夏、シルファ先輩と行った頃は落ち着いていると思ったのだけど……また何かのきっかけで、動き出したのかもしれない。
「ともかく助かったよ。お礼に、食事のほうはこちらで用意しよう。シェフに何か作らせるよ」
「え、マジですか?!」
イマド、すごく嬉しそうだ。
ただあたしはどうにも落ち着かなくて……それでもワサールへ着くのを、ただ待つしかなかった。




