Episode:162
ため息つく。
「……シエラ、帰ろうぜ」
これといってなんか、いい考えがあるわけじゃない。あそこなら最低ラインは何とかなる、ただそんだけだ。
ホントなら終わりにしたいとこだけど、互いに相手泣かせるの思うとそれが出来ねぇわけで……だったらせめて、現状維持だろう。
早い話、どこまでも後ろ向きの選択肢だった。
積極的に未来を切り開けとか言うヤツ居るけど、ンな気にはなれない。
この年でって言われちまいそうだけど、「疲れた」ってのが本音だ。未来のどうこうなんて信じて頑張るほど、気力がねぇ。
明るい未来とやらなんて、どこにあるか見当もつかなかった。自分自身も周りも親殺されたりなんだりで、いろいろ知りすぎたのかもしんない。
だったらもう、何もしたくねぇし何も起こってほしくねぇから、いちばん居易そうな、何も起こらなそうな、慣れてる場所へ戻る。
マジで、吐き気がするほど後ろ向きだ。けど今んとこ、他に考え付かなかった。
「イヤか?」
「ううん……」
学校に憧れて、なのに行き場所無くて、シエラに来たルーフェイアだ。イヤかどうかで訊かれりゃ、イヤって言うわけなかった。
そんでもコイツが下向いたままなのは、自分の〝力〟を見せ付けられちまったからだろう。
万が一暴走したら、確実に周りを巻き込む。そん時にシエラなりに居たら、仲間を全滅させかねない。それが怖いんだろう。
けど、考えてて気づく。
「……お前、暴走してなくね?」
「え?」
俺の言ったことが予想外だったらしくて、ルーフェイアがきょとんとした。
「いやだからさ、俺助けるときに使ったヤツ。あれ、自分でやったんだろ?」
「うん……」
コイツが辛そうにうつむいた。
「でもあたし、あんな威力……あるなんて……」
「いや、確かにそれはあるけどよ。でも自分で分かってて使ったんなら、味方巻き込まねぇじゃん」
ルーフェイアがはっと顔上げた。
でもまたすぐ下を向く。
「でも、あんなやり方……」
「殺し方なんて関係ねーよ。つか、砲撃だったらいいのか?」
これも本音だった。
ルーフェイアのあれがダメってなら、お袋殺したみたいに剣ならいいのか。てか軍人相手にしたルーフェイアと、普通の人が山ほど暮らしてる町に砲撃かけんのと、どっちがまともなのか。
そんなの、答えがあるわけねぇ。
人殺しなんて、そんなもんだ。