Episode:110
そしてイマドが、不敵な笑みを見せた。
「っても、出るんだろ?」
「うん」
今もまだ、砲撃は続いてる。このままじゃ遠からず、町の人が逃げきる前に大惨事だろう。
「んじゃ、俺も行くわ」
「え、でも!」
ただそうは言ったものの、続きをあたしは言えなかった。
能力的には、イマドには来て欲しい。あの魔力を暴走させる能力は、撹乱にはもってこいだ。
けど、イマドはほとんど実戦経験がない。だから前線育ちのあたしと違って、実際に出るのは荷が重いはずだ。
「おまえ、さっきと言ってっこと違うぞ? だいいち俺、姉貴にも出るってたろ」
「そうだけど……」
さすがにイエスとは言えず、口ごもる。
「でも、やっぱり危ないし……」
「お前ならフォロー出来んだろ」
こう言い切られてしまうと、何も返せなかった。
「ほら、あんたたち、逃げるよ」
ヘイゼルお姉さんがあたしたちを促す。たしかにここも、早く出たほうがいいだろう。
「行くよ、ってそっちじゃない!」
玄関へ向かおうとしたあたしたちを、お姉さんが止める。
「なんで? 外出なきゃダメだろ」
「砲撃の中、外へ出るバカがいるか。こっから直接地下だ」
思わずイマドと顔を見合わせた。
「徹底しすぎだろ……」
「何言ってんのさ、この手の建物はいの一番に狙われんだから、逃げ道あってあったりまえだろ」
お姉さん、あっさり返してるけど……ある意味この町、シエラ以上じゃないだろうか。
けどまぁ、悪いことじゃない。
「裏へ周って、階段降りるんだ」
「はい」
お姉さんに連れられて地下1階へと降り、右へ左へと通路を曲がった。敵に追われることを前提に作られてるみたいで、かなり道順が複雑だ。
「姉貴、よく覚えてんな」
「覚えてるわけないだろ」
イマドの感心したような問いに、怖い答えが返ってくる。
「待てよ姉貴、んじゃテキトーか?」
「ヒドいな。テキトーじゃ逃げられないだろ。ほら、そこの床」
言われて見てみると、石畳の模様の向きが違うものがあった。