Episode:11
この航路は、去年の春に病院テロを引き起こした人たちの国、ワサールとを結んでる。だから他の航路よりずっと、ワサールの人にとっては仕掛けがしやすいはずだ。
それに細工されてるのも、いちばんいい部屋だ。これだと被害の割に、注目が集まる。
やられるほうは、たまったものじゃないけど……。
「かもな。じゃなきゃこんなモン、部屋に置かねーし」
「だよね……」
乗船したときに部屋のカギが開いてたのも、テロだと思えば納得がいく。仕掛けた誰かが、閉めずに出て行ったんだろう。
「で、これどーすんだ? 放っておいたらヤバいんだろ?」
「あ、うん。無力化しないと」
魔方陣の無力化自体は、そんなに難しくない。文様に落書きするだけで済む。
ただ、発動している場合は別だ。既に魔力が流れ込んでるから、ヘタに壊すと暴走して大変なことになる。
「どうすんだ? これもう、動いちまってっぞ?」
「大丈夫」
答えて、呪文を唱えた。
「荒れ狂う魔の流れよ、いまひとたび静寂のうちに、在るべき姿に戻れ――カーム・フィルド!」
短時間だけど、すべての魔法を無効化する呪文だ。
続けてもうひとつ。
「エレメンタル・ブレスっ!」
最強の防御魔法が、陣を覆うように発動した。
「なるほどな、これなら暴走してもどうってことねーか」
「うん」
魔法の効果がある間に、手早く線を書き足していく。
上下左右、真ん中の陣から外側の陣へ。そして外側の陣から枠の外へ。計8本の線が陣に加わった。
「へー、そんだけで魔力、外へ流れんのか」
「線で、漏れちゃうの」
理屈はよく分かってないけど、陣を簡単に無効化できる、よく知られた方法だ。
逆に言うとこの辺もネックで、陣が広まらない一因になってる。要するにヘンに汚れたら、それだけで効果がおかしくなるわけで、使うには不便だ。
魔力石に比べて出力が圧倒的だから今も使われてるけど、それがなかったらこの技術、とっくに廃れてると思う。
「全部魔力、流れちまったな。これならもう動かねーわ」
「……よかった」
手順が正しいのは分かってるけど、見えるイマドにそう言ってもらえると、やっぱりほっとする。




