Episode:100
「俺らは?」
「一旦家へ戻って、用意だな。寄り合いが終わりゃ、すぐ逃げ出すってことにもなりかねないし。ほら、乗って」
イマドのおじさんの家までの短い距離、車に揺られながら思った。
――面白い町だな、と。
ふつうはどこも、なかなか町や家を捨てない。でもその愛着が、守りたいという気持ちにも繋がる。
けどこの町はまったく逆だ。守りたいから、無くしたくないから、さっさと逃げるという。
こんな町、世界中探してもここだけかもしれない。
ただ……心配ではあった。
今までもこうやって、逃げて生き延びた実績は、認めるべきだと思う。だけど今回は、もう軍が間近に迫ってる。正直あの森からじゃ、いつ砲撃を加えられてもおかしくない。
そういう戦火の中を、老人子供を連れて逃げられるだろうか? 進軍してくる武装兵の目をかいくぐって、町の外まで行けるだろうか?
「……どした?」
黙ってしまったあたしを、心配したんだろう。イマドが声をかけてきた。
それへ、少し迷ってから小声で答える。
「あたし、ううん、あたしたち出なきゃ……ダメかも」
「あー、そうかもな」
さすがイマド、これだけで話が通じた。
「けど、危なくねぇか?」
「混乱だけさせれば、いいと思う」
「なるほどな」
あれだけの数の軍と森の中で対決なんて、所詮無理な話だ。周りを取り囲んで森ごと焼かない限り、まずムリだろう。
でも混乱させるだけなら、なんとかなる。こっちが少人数という利点を利用して、こっそり近寄って魔法。特に今はイマドが居るから、魔石の暴発もさせられる。
こういったことを上手く駆使すれば混乱を招いて、足止めすることも可能なはずだ。そうすれば、避難するのもそれだけ容易くなる。
「ただ、その……こっちのスケジュールが、分からないと」
「んだなー、的外れなとこ狙ったら、意味ねーしな。おじさんに話すか」
「あんたら、何の話してんのさ」
さすがに不審に思ったんだろう、お姉さんが訊いてくる。
一瞬2人して黙って――口を開いたのはイマドだった。
「まだ決めたわけじゃねーんだけどさ、俺らシエラだろ?」
「んだねぇ。で、それがどーしたのさ」
学院生じゃないお姉さんには、まだ話の概要は見えないらしい。
――見えても、困るけど。
軍相手に何をどうしたら効果的かなんて、一般の人が知っているほうがおかしい。




