Episode:10
「どーも苦手なんだよな、これ。意味は分かっけど、何書いてあるかわかんねぇっていうか」
「そうなんだ……」
あたしたちと違って、イマドには魔方陣の中の流れや効果そのものが見えるから、逆に覚えづらいんだろう。
「このいちばん外側と、真ん中の円が……魔力を呼び込むの」
「たしかにそうなってんな。中間石みたいなもんか」
「ちょっと違うかも……でも効果は同じかな……」
何て答えるべきか悩む。
いちばん普及してる、魔具の心臓部とも言える魔力石は、種類が2つに分けられる。といっても、石自体はどっちも同じもので、途中の処理が違う。
ひとつは、大きな魔力を蓄えるタイプ。もうひとつは、ほとんど魔力はなくて、呪文が書き込まれたタイプだ。
魔力石は魔力を蓄えることができるけど、容量が決まっている。しかも面倒なことに、呪文そのものも容量のうちだから、高度な呪文を書き込むほど威力が落ちる。
これを解消したのが、呪文と魔力の切り分けだった。
今ある列車みたいな、高出力な魔具は基本的に、3つの石がセットで使われてる。
1つは俗に発動石とも呼ばれる、発動させたい呪文を書き込んだもの。次に中間石とも呼ばれる、発動石と共振性を持たせた「魔力を集める」効果を持つもの。それとごく単純な、魔力だけを蓄えたものの組み合わせだ。
魔力が石から放出されると、それを中間石が集めて、発動石に渡す。
魔方陣と違って石は安定していて、出来ることが限られるものの暴走がない。加えてこのやり方だと、エネルギーが尽きたときは石を取り替えるだけで済むから簡単だ。
このシステムのせいで、専門知識の必要な魔方陣は、一般にはあまり広まらなかった。
でも当のイマドのほうは、微妙に違うことを気にしてるらしい。
「中間石と違うっても、動きは同じだよなぁ。やっぱ一緒じゃね?」
「まぁ、そうかも……」
使っている呪は別のはずだけど、イマドには同じように見えるみたいだ。これじゃ確かに、細かい陣は覚えづらいだろう。
「で、真ん中は?」
「今読んでるけど……爆破?」
「――破壊してどーすんだ。危ねぇな」
イマドの言うとおりだ。寝てる間にベッドが吹き飛んだら、安眠どころじゃない。ヘタしたら命に関わる。
そこまで考えて、はっと思い当たった。
「また、テロ……?」
状況としては、おかしくない。




