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「魔法……!?」




 ノーラとファロン医師が瞠目した。


 一方、既に何かを察知していたらしいミゲルは驚くこともなく「やはりそうですか……」と表情を険しくさせる。




「ええ、魔法――もっと詳しく言えば、呪いね。この子の記憶に他人の記憶が重なっている。この子は病魔に冒されてるわけじゃない。過去に生きた他人の記憶を追体験させられてるだけ」

「記憶の――追体験?」

「古典的な呪いの一種よ」




 ノーラの言葉に、私は素早く説明した。




「他人の苦しみの記憶を他者に植え付けることで、精神から肉体を攻撃する……この子は過去に火熱に感染した、縁もゆかりもない人間の記憶を植え付けられ苦しんでるだけ。この大量の患者もおそらく全員がそうよ」

「馬鹿な! あり得んことだ!」




 ファロン医師は真っ青な顔で言った。




「魔法には詳しくないが、こんなに大量の人間を一時に呪ったというのか! 一体何の目的があってそんなことを――!?」




 そう、ファロン医師の憤りは尤もな話だ。


 こんな大量の人間を、疫病に見せかけて一方的に呪いを仕掛ける理由などないし、第一こんな広大な範囲を呪う魔法を行使できる人間も数少ない。


 相手は一般庶民、しかも貧民で、これが王国に対する何らかの脅迫行為ならば、わざわざ貧民を相手にする理由がない。




 そう――相手が普通の人間だったならば。


 口を噤んだ私に、ミゲルは何かを察したらしい。




「それで、どうしますか?」

「どうもこうもないわ。こんなことし腐ってる人間に向けて呪いを返す。呪いを術者のところに跳ね返せば、企みがバレたことに驚いて全員の呪いを解除するだろうし、多少は痛い目を見せられるはずよ」

「呪いを跳ね返す……?! そんなことできるんですか!?」

「できるからの《樒の魔女》だ。下がってろ、娘」




 ミゲルの冷たい一言に、ノーラとファロン医師は慌てて執務室の壁際に寄った。


 医師のようにシャツの袖をまくり上げ始めたミゲルを見て、私は母親として忠告した。




「もしかして手伝う気? わかってるけど呪いの解呪は――」

「手負いの野良猫を抱き上げるようなもの――そうでしたね? わかった上でお供します」




 わかったようなことを口にしながらも、ミゲルの鉄面皮にはいつもと違って緊張の色がある。


 魔女ではない、ただの人間の男が呪いに手を出すということが如何なることなのか――おそらく、わかっているからこその表情だ。




 だが――せっかくの息子の加勢を無にするわけには行くまい。


 第一、ミゲルは自分で責任の取れないことは言い出さない。


 そしてなおかつ――言い出したらテコでも動かない頑固者でもあるからだ。




 さて、と私は少年を見下ろした。


 モノがモノだけに、相当な抵抗が予想されるに違いない。


 これはちと派手な見世物になるだろう。




 私は覚悟を決めて少年に向き直り、掌に静かに意識を集中させた。


 ミゲルも同じように、少年の胸の前に右手をかざした。




 途端に、少年の身体の周りに黒い霧のようなものが漂い始め――それはゆらゆらと緩慢に形を成し始める。


 ノーラとファロンが背後で息を呑む音が、やけに大きく聞こえた。




「謹告!」




 頃合いを見計らい――私は一喝した。




「《樒の魔女》の名において――この者に(わざわい)為すものよ、出てこい!」




 その言葉と同時に、私はぐっと左手を握った。





「面白かった」

「続きが気になる」

「もっと読ませろ」


そう思っていただけましたら

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