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病院に到着しました!!

 商店街のど真ん中に飛び出してきた飛影、およびそれにしがみつく四人を見て、人々は腰を抜かしてその場にへたり込んだ。


 あたふたと逃げ惑う人々を鋭い機動で危うく躱しながら――飛影はぐんぐんと上昇に転じた。




 このまま一気に高度数百メートルの位置へ。


 まるで矢のように空中を疾走する私たちに、空に輪を描いていたトンビが肝を潰して逃げ惑った。


 無事予定高度に達したところで飛影は水平を取り戻し――ぴたりと機械的に止まった。




「おい、ノーラ」

「――ぅ」

「こら、おい。田舎娘、聞いてるか」




 私がぺしぺしと頭を叩くと、黒目が半分飛んだノーラが焦点の合わない目で私を見た。




「どっちだ、アンタの家?」

「は――あ――」

「ああ、そうだった――南の灰色地区って言ってたわね。えーと、太陽がこっちだから……南はあっちだな。よし、また前進するわよ」

「あ! ちょ、ちょっと待っ――!」




 ノーラが懇願し終わる前に、飛影は再び砲弾のような勢いで前進を始めた。


 ぐんぐんスピードを上げ、目玉が押し込まれるような感覚に私の血液が沸騰する。


 箒に乗るのは久しぶりだけど、私の身体はまだこの興奮を忘れていないことに感動した。


 なにか人里に用がある時、昔はこれに幼い息子二人を乗せて歩いたものだが――思えば二人とも、よく振り落とされて死ななかったものだ。




 イヤッホォォォウ! と叫びながらしばらく箒を飛ばすと、あっという間に南の灰色地区と思しき、くすんだ色の街が見えてきた。


「降りるわよ」と一言言い残して、私は箒をすーっと下降に転じさせた。




 下にいたボロを纏った貧民たちの目がみるみる丸くなる。


 私はその視線に構わず、ゴミとガラクタが層を為す広い通りに箒を着陸させた。


 ふわっ、と土埃が巻き上がり――私の足が地面についた。




 途端に、箒から降りたノーラがふらふらと壁際に寄って両手をつき、潰されたヒキガエルのような声でえづき始めた。


 なるべくそっちの方を見ないようにして「さ、アンタたちも降りなさい」と言うと、ミゲルとニコルは青い顔のまま箒から降りた。




「何度乗っても――この箒で飛び回ることだけは慣れませんね……」

「だいたい僕ら転移魔法だって使えるのになんでわざわざ箒なの……?」

「バカね、なんでも魔法に頼ってたら人間力が落ちんの。それに霊薬は【天窓転移】の魔力に当たったら変質すんのよ。とにかくつべこべ言うなつべこべ」




 私がひとしきりお小言をまけると、ノーラの逆噴射もようよう治まってきたようだ。




「そんで、ノーラ。アンタの家はどっち?」




 私が言うと、涙目で口元を拭ったノーラが私を見て、震える指先で横手の方を示した。


 ん――? とそちらの方を向いた私は、途端にぎゅっと眉間に皺を寄せることになった。




 死屍累々、とはこういうことをいうのだろうか。


 貧民街の通りを埋め尽くすばかりに列を成した、いずれもボロを纏った貧民たち。


 そのどれもが激しく咳をしており、高熱に呻き声を上げ、既に立つことも叶わなくなったものは地面に横たわり、全身を苛む苦しみに血が出るほどに地面を掻き毟っている。


 今にも息絶えそうな病人の群れは、やはり貧民街にはお似合いの安普請の建物へと連なっている。おそらく、あれがノーラの医院だろう。




「ママ、これは――!」

「ええ、ちょっと数が多いわね。ニコル、【広域回復(エアリアルヒール)】と【生命力増強(エナジーバフ)】できる?」

「任せてよ。――【広域回復】!」




 途端に、ニコルの手から白い光が迸り、呻き声を上げる病人たちの列に優しく降り注いだ。


 途端に、今まで耳を聾するばかりに聞こえていた咳、呻き声が格段に落ち着いたように聞こえた。




「よし、とりあえずこれで時間稼ぎはできそうね――」

「だけどママ、【生命力増強】は個別にしかかけられないよ。どうする?」

「わかってるわ。とりあえずニコル、あなたはここで魔法で病人たちをなんとかして。ミゲルとノーラ、私は医院で処置に当たりましょう」

「わかった。何かあったら呼んでね、ママ!」




 言うが早いか、ニコルは駆け足気味に病人たちの列に紛れ込んでいった。


 私たちはポーションが満載された袋を担ぎ上げ、病人たちの列を掻き分けて医院の中に入った。





「面白かった」

「続きが気になる」

「もっと読ませろ」


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