13. クソな記憶も役に立つ(こともあるかもしれない)
「ターコ!」
数人の男子がニヤニヤしながらこちらを見ている。
同級生の子が私のことを「たあこちゃん」と呼ぶのをからかって、「ターコ」。
ここで私が男子の方を見たり反応をすると、「俺達タコの話してるんですけど〜? 自意識過剰〜!」と笑われる。無視したら無視したで「無視すんなよ高科!」と笑う。
ものすごく嫌だった。
そんな嫌なからかい方をされる女子は私だけではなくて、もっと頻繁にからかわれている女子もいた。
からかう男子は決まっていて、悪ぶっている数人。噂ではそのうちの一人はお兄さんが暴走族にいるだかなんだか、よく覚えてないが、とにかく生徒指導の先生に怒られるお決まりの面子だったように思う。
横田はそのメンバーの一人だった。
席替えで隣だったことがある。確か、その時に「ターコ」と言われたんだったか。思い出したくもない。
そうだ、思い出した。
横田から「ターコと結婚してやってもいいぞ」と言われたことがあった。
ああこれは反応したら「お前じゃないですタコのことです〜」と言われる流れだと思ったけど、つい即座に
「絶対やだ」
と答えた。
横田は顔をへの字にして
「オレだって絶対にタカコとは結婚しねーわ! ブース!」
と言った。
「まさにへの字って顔だった。今思い出しましたわ」
言って季節限定イチゴ杏仁豆腐を一口。
「! 永瀬さんこれめっちゃ美味しいですよ!」
私の思い出話の聞き手としてデザートを食べる手が止まっていた永瀬さんを促す。このファミレスチェーン店に入るのは数年ぶりだけどこんな美味しかったっけ? 企業努力に感謝〜!
甘味にテンションの上がる私に対し、永瀬さんは少し呆けたような顔でこちらを見ていた。
「……あの、ウミさん」
スプーンを口に入れたまま、ん? と目線を永瀬さんと合わせる。
「私今からドチャクソハイパー最低ドオタク発言するんですけど、あの、それ、オタク脳で聞いちゃうと、『素直になれない男子が好きな子に嫌がらせしちゃう』シチュっぽくないです……?」
「!」
「あの、嫌な思い出に本当にすみません……」
永瀬さん、天才か。
「永瀬さん……あなたのお陰で今の話、自分の人生と切り離して恋敵戦争の架空エピとして私の中で昇華しました……私の人生はこのためにあった……」
「あっ良い感じになったなら良かったです」
「良いなんてもんじゃないですよ勝利くんがユウに『お前じゃないです英語のYOUです〜』とか言ってたら良くないです?!」
「待って変換が天才のそれ!」
季節限定イチゴ杏仁豆腐の味が十代青春の甘酸っぱさに感じてきたー! やばい勝利くんがそんな子供っぽい嫌がらせを好きな子相手にやっちゃうとか可愛いが過ぎる。
そこから私と永瀬さんは今日撮った写真の加工も忘れて恋戦の妄想話に突入した。
好きの気持ちに年齢は関係ない! オタクやってる時が一番生きてるって感じするー!
それにしても、あんまり直視できなかったけど横田もあの悪ガキな雰囲気からしっかり大人になったものだ。眼鏡はもしかして老眼だったりする? 私もそろそろかな〜って気にしてはいるんだけど。
相手が普通に成長してるだけで私が成長してないだけか? まあオタクやってる今のいま、楽しい時間はそんなの気にしなくて良いのだガハハ。




