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魔王後継者は元上司  作者: 捨身祓
プロローグ
1/5

渦中の栗

 気持ちのいいよく晴れた、登山にもってこいな秋分の日だというのに、ここ高尾山で誰一人として見かけていない。今日はここに至るまでに違和感を何度も何度も感じていた。

 家を出てから最寄駅に着くまでのたった三〇〇メートルあるかないかという短い一本道で捨て猫を二十匹も見た。さらには高尾山口駅から一号路の出入り口までの二五〇メートルしかない短い道で捨て猫を三十匹も見た。捨て猫にはかなり好かれていたようだが、生憎この男には猫アレルギーがあって、何もしてあげられなかった。

 それだけじゃない。休日だというのに、今日まだ誰とも会っていないのだ。少なくとも自分の身に何か良くないことが起こっていることだけはわかる。

 そんなことを考えていたら、いつの間にか山頂に到達していた。小学校に入学してから毎年秋分の日に高尾山に登るようになったが、こんなに登頂した実感がないのは初めてだ。いつもだったらもっと周りの景色を見ながらのんびり歩いている。まだ十時前だということが信じがたい。こんな早く着くと手持ち無沙汰だ。

 とはいえ、ここから見る景色は別格だ。ずっとここにいて都会の喧騒から離れていたい。あんなクソみたいな会社のことも。こんな話は忘れよう。思い出すだけでも精神衛生上とても良くない。

 「サラ〜、お母さんトイレ行ってくるから、大人しくそこで待ってなさ〜い」

 「は〜い」

 今日初めて聞いた会話がものすごくほっこりする内容だが、状況が状況であるため、不穏でしかない。今サラと呼ばれたいたのは十歳くらいの女の子だ。可愛いけどそんなことを口に出してしまえば警察のお縄になってしまう。

 とりあえず少女が変な行動をしないかだけでも見守っておこう。

 「まずい、そっちは…!」

 いい癖というべきか悪い癖というべきか、どうやら口に出すより先に行動を始めていたらしい。気がついた時にはもうハジメも手すりよりも崖側にいた。色々なシーンを思い出していた。走馬灯を見ることは別に構わないが、絶対に死ぬのは御免だ。結婚式を来週に控えた姉を悲しませるなんてことはできるわけがない。

 そうはいってもここから落ちて生き残れる確率なんて天文学的確率だろう。そう考えたときに、することのできる最善の策はせめてこの少女だけでも死なせないことくらいだろう。そうすれば結果的にも俺の顔を立てることもできる。

 そろそろこの世界に一切干渉することができなくなってしまう。この子が命を失わないようにするためには結局神頼みをするしかなさそうだ。彼自身のことをこんな理不尽な死に陥れた神に。全くもって理不尽だ。

 「せめてこの子だけでも助かりますように」

 少女の口元が少し緩んだように見えた。




 昨日の夜はネ友と六時間ほどVCを繋ぎながらFPSゲームをしていたせいで睡眠時間が三時間くらいしかない。仕事に支障のない範囲だといいが、最悪エナドリをキメれば耐えれる。その割には心地よい夢を見た後のような目覚めだ。

 ギリギリ日課になっている六時スタートのニュース番組には間に合った。今日と同じくらいの時間に起きる日は十五分くらい遅れてしまう。

 それはそうと、ハジメの家になんでロシアンブルーがいるのか疑問でしかない。家の鍵を持っているのは自分以外には絶対にいない。誰がどのようにして運んできたのだろうか。

 「次のニュースです。昨日正午ごろ、高尾山の西側の斜面で男性と少女が倒れているのが発見されました。男性は病院に運ばれましたが、その後死亡が確認されました。男性は河野(こうの)(はじめ)二十三歳と見られ、十歳の少女を庇おうとして亡くなってしまったと見られています」

 青年の脳内にはいくつもの疑問符が浮かんでいた。

 俺は死んだのか?だって昨日の夜は「Fotia」と喋りながらランク上げをしていたはずだ。あいつに聞けば俺が昨日の夜にゲームをしていた裏付けをしてくれるはずだ。それに俺は昨日高尾山に行った記憶がない。色々と辻褄の合わないことが多すぎる。これが夢だと考えない限り説明がつかない。

 「にゃー」

 「元凶はお前なのか?」

 「ご主人様、一旦ニュースは最後まで聞いた方がいいと思うにゃー」

 「わかったから最後ににゃーっていうのをやめてくれ」

 「にゃ…」

 「…???」

 本当にこの猫はなんなんだ。というより今喋ってたよな?疑問点があまりにも多い。

 「男性と共に見つかった少女は病院に搬送されましたが、さまざまな検査を受けて、奇跡的に無傷であったと発表されています」

 ようやく昨日の午前中にあったことを全て思い出した。あの子の命を守ることができたのはよかった。

 「猫、お前に聞きたいことが山ほどある」

 「私にだって名前くらいありますよ、猫じゃなくてファイです!それに猫ですらないです!」

 ポンという音と共にファイの姿が変わった。

 「まな板…」

 「よくレディーに向かってそんなことが言えますね!私怒りましたからね!」

 「すまなかった、つい本音が」

 「それ、謝ってませんよね!でもこんなことで言い争っていたら話が進みませんもんね、今回だけ許してあげます。それで聞きたいことって?」

 「一つ目。お前は何者だ」

 「私、ファイはご主人様たちの言う異世界から来ました。国王の命を受けて魔王を討伐するための勇者を探してこいと言われてきました」

 「二つ目。昨日高尾山に向かっている途中でさっきお前が化けていた姿に似ている猫を大量に見たんだがあれは全部お前だったりするのか?」

 「大正解です!国王にご主人様は猫が絶対に大好きだと言われたのでずっと猫になっていたんですけど、まさか猫アレルギーとは思いませんでしたよ」

 「三つ目。山頂で見た子供はお前だったのか?」

 「私はあの子に憑依していただけです」

 「俺が助けに行かなかったらどうするつもりだったんだ?」

 「それは魔法を使うほかないじゃないですか。まあご主人様が魔法を使ってくれたおかげであの子は無事だったんですけどね。やっぱりご主人様には素質があります。私の目に狂いはなかったってことね。うんうん」

 「俺は魔法を使えるのか?」

 「今も自覚がないなら才能の塊ですよ。あっちでも魔法を無意識のうちに使ってる人なんてそういませんから」

 「そうなのか。それじゃあ四つ目いいか?」

 「なんでございましょう?」

 「昨日の夜ネ友…友達とゲームをしていたはずなんだが、これは事実か?」

 「ええ、普通にゲームしてましたよ。友達にはさぞ不思議がられてるでしょうね」

 だからか、アイツが最初気味悪そうに喋っていたことがずっと不思議で仕方がなかった。

 「次のニュースです。昨夜午後八時過ぎ、横浜市緑区の一軒家で火事がありました。この家に住んでいる四十代の男性と連絡が取れなくなっており、警察と消防が捜査を進めています」

 待て、この家ってまさか上司の家か?あの優しい上司が死んだのか?そんなバカなことがあっていいのか?


 「ご主人様。この火事の原因、多分私たちの世界の魔王軍のものですよ」

初めての方は初めまして。初めてじゃない方はこんにちは。捨身祓です。

現在思いっきり夏休みを謳歌している高校生です。まだ八月も六日だと言うのにもう今月の通信制限が来てしまった愚か者でもあります。

まともにラノベを読んだこともなく、めっちゃ文章が拙いもので。すいません(泣)

設定を考えてるだけで余裕で二時間くらい過ぎている時はほんと怖くなります。

あとがきが思いついたことを書き連ねてるだけで悲しくなってしまいます。

来週も投稿する(予定な)ので、読んでいただけると幸いです。


二〇二三年八月六日

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