最終話 途路
グンルが持つ最も強力な武器は〈骸の剣〉と彼女が呼ぶ魔剣だった。それで傷つけられた相手は、意識を保ったまま骸となり、動くことはできない。死者は、静止していなければならない。既に、幻影によって酩酊していた邪竜は、この恐ろしき魔剣によって傷つけられていた。
グンルは無造作に〈墓荒らしのケペシュ〉を振るい、邪竜を消滅させた。長らく続いていた喪失感・違和感が拭い去られ、彼女は自分の魂魄の一部が戻ったのを感じた。
これで犠牲者たちの仇を討つことができたが、グンルの中にあるのは達成感ではなく、次の竜を狩るという意欲だけだった。
獲物を探しに行かなければ。邪悪なる竜たちを屍に変える、それが使命だ。前世の竜狩りのものか、自分のものか、あるいは他の誰か分からない意志を抱き、グンルは歩き始める。
その後ろに、数々の人々が続いた。竜に囚われていた、フュルギアの座員たちだ。アーロンやレーム、ドルシネア、マイヨルガ、カルネアデス、スワロウテイル、ルネッタ、コアーズカルフ、アスフォデル、フィアス、群れグリフィンと帝国兵とヤズデギルド、アクルガル、アクルガルの手にかかった〈銀の黎明〉の幹部、ラオディケと金角杯騎士団の部隊、、砂漠に埋まっていた巨大機械、連行されていったパン屋、棺桶運びの一団、緑色の汁を分泌する犬、汚職衛兵、〈煤払いのアマラスンタ〉、マンティコア五体、勇者フラットフリント、黒猫十七匹、密輸人三人、〈断絶街のヌミトル〉、〈断絶街のヌミトル〉の妹、〈朧月のオルカ〉、酒場の酔客、すれ違った通行人、その他会った記憶はない無数の人族と魔物、そこにはいないが確かに存在している同伴者たち。
あの竜は世界を旅することができて幸福だっただろうか。自分から逃亡するためだけの仮初の使命によって、幾分の猶予は与えられた。正気を失っていたものの、あるいは、何らかの喜びがあったのだろうか。
北方の地に、人々が列を成す。竜狩りの一団たちは、南に向かって歩き始めた。それは次の一匹を探すための、新たな途路だった。




