第7話 最果てへの導き手、アーロン
翌日、再び〈ヴァーノン通りの廃聖堂〉にやって来て、この前バリンジャーと共に探索した区画とは異なる方向に進むと、崩落した天井から陽光が降り注ぐ、墓地があった。そのただ中に、宿で遭遇した黒髪の青年がいた。
「来てくれたな、グンル。まずはそうだな、オレが誰かを説明しておこう。名前は――」彼は周囲の墓石に視線を移し、「アーロン・アンダースとでも名乗っておこう」
それは明らかに、赤の他人の名を組み合わせた偽名だったが、迷宮守りはもともと本名でない通り名で活動する者が多いので、妙な話でもなかった。グンルはアーロンに、あなたは幻覚なのかと尋ねる。
「結論から言うとそうだ、オレはあんたが罹患した迷宮病の〈症状〉だ。オレはそれを自覚しているし、あんたもしているようだな。だが単なる幻覚ではなく、役目を負わされた〈幻視〉だ。導きとしての役目をな。マルゴルによってだ」
マルゴルは風の神であり、旅人たちの守護神だ。世界をさまよう風生まれたちを、かつて楽園から追放したのもマルゴルだという伝説があるが、それはかの種族が何らかの罪を犯したためとされている。過ぎたる放埓のためとか、盗賊の神ハルミナと手を組んでマルゴルを陥れた、あるいは秘宝を盗んだという説もある。いずれにしろ、風生まれたちは永久に一か所に定住できないという呪いを種族単位で受けているとされる。
「〈最果てへの途路〉を辿る定めがあんたには与えられた。風生まれたちが追放された、楽園へ向けての放浪だ。あんたは風生まれと同じく、放浪の呪いを魂魄に受けた。だが、その終点には楽園が待っているというわけだ。いいニュースか悪いニュースかは、オレは判断できない。確かなのは逃れえないということだ」
グンルとしてはアーロンが言っていることが事実かどうかは分からない、元来、一か所にとどまることなく迷宮守りとして活動してきたので、その呪いとやらを受けても何かが変化するわけでもないのだ。楽園が待っているというのなら、悪いニュースではないのかも知れない。
アーロンはいつしか消えた。そのままグンルは、迷宮探索を再開した。その日はゴブリンの漁り屋を三体、ジャッカロープ・ゾンビを二体倒した。そいつらの魔石並びに、迷宮芋と玉ネギ、ワイン、硬貨数枚、古びたナイフなどを入手した。




