第48話 移動計画
グンルとアスフォデルはカリナの街を歩いている。ここは暑すぎるので北へ行きたいと告げると、彼は大して関心がなさそうに「ああ、そうか」と承諾した。
「移動手段について話しておきたい。今後も引き続き徒歩でいくのか、それとも鱗馬とか一角牛の引く馬車で行くか。自動車、列車、あるいは転移門や〈飛ばし屋〉を使うという手もあるし、ただ行くか短縮するかも選べるわけだが」
短縮という語の意味についてグンルは尋ねる。
「この世界は極めて広大だし、都市一つをとってもそうだ。例えばこのカリナであっても、端から端まで移動するには通常のやり方だと一年くらいかかる」
さすがにそこまでは大きくないのではないか、とグンルは反論する。外観からして、どんなにゆっくり歩いても数日だ。
「それは空間の短縮・簡略化が発生しているからだ。つまり迷宮の恩恵というわけだ。文章を読むとき、流し読みという奴があるだろう。一字一句読まずに、表層だけを、目に留まるところだけを見る。それと同じで、世界を簡略化することが我々には無意識にしろ可能なのだ。
個人の主観・認識が時間と空間に作用を及ぼすというわけだ、迷宮が触媒となってな。君の見ている幻影と同じだ。そうしたければ、わたしは君にやり方を教える、で、どうだ。急ぐのか?」
ギョールに行くことを急ぎ過ぎれば、アーロンや座長に怪しまれる恐れがある。彼らが、欠落している自分の過去を知っているのかどうかは分からなかったが、それを隠すべきだとグンルは判断し、アスフォデルに急ぎはしないと答えた。
「そうか、ではそこそこの速度で向かうとして、次に旅費の問題がある。君の手持ちは――」グンルがその額を述べると、彼はもっともらしく頷いて、「少々不足しているな、いや、少々ではないか、いずれにしろ稼ぐ必要がある。知っての通り私は〈盗品商〉、君が何かを盗んできたら、それを即座に換金することができる」
アスフォデルが左手をかざすと、それに重なって別人の――別の何かの――手が現れた。節くれだった歪な、怪物の暗い影だ。彼の言うところの、アシュウの御使いだ。
「おれの目が黒いうちは、盗みはだめだ、そんな堕落した犯罪を――」カルネアデスの言葉は、途中で密輸人によって遮られる。「それより密輸だ……砂漠の街から街へいかがわしい代物を密輸するのだ……ああ、だが単なる輸送でも構いはしない……もちろん、天と地ほどに差があるが……オレも柔軟性があるところを見せなくてはな」
グンルはあまり気が進まなかった。そこでアスフォデルが助け舟を出す。
「ならば、不死業はどうだ?」




