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DUNGEONERS:VAGRANT  作者: 澁谷晴
第4章
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第41話 帝国の地

 コス帝国は本来、国土の多くが肥沃な大地に覆われていたが、大崩壊によって異世界と衝突・融合を引き起こした後は、迷宮と化した危険な砂漠へと変貌した。イーグロン大陸と比べて危険度が高く、西から帝国へ渡る名うての上級迷宮守り(ダンジョナー)がいても、逆はほぼないとされる。


 壁の穴から外へ脱した座員たちの前にグンルが、何事もなかったかのように姿を現した。戦士たちは再び断片化し彼女の脳内あるいは魂魄内に収容された。先ほど一時的に表れてすぐに消えた〈蜃気楼のヴェイグ〉は既にいない。なにやら意味深な発言をした彼を、あまり気に留める者はいなかった。今はひとまず、近くの都市を目指す必要があった。


 幸い、地平線の辺りに迷宮都市と思しき影が見える。食料は手持ちの兵糧と、スワロウテイルが持っている分を合わせれば一週間程度は持ちそうだ。水に関しても、グンルや他の座員が〈湧水〉の術を使えるので、当面の心配はなさそうだった。


 砂の中には様々なものが埋もれていた。竜の骨や、巨大な人型機械の残骸。大崩壊直前に発生した最後の内乱で用いられた兵器だ。それらはグンルが変容し、魔獣を握りつぶした手よりもさらに大きい。大崩壊がなくとも、旧帝国に致命的な瑕疵が発生したであろうことは間違いなかった。


 砂漠を横断する最中、もちろん魔物は何度も現れた。葬送魔獣と同じか、それよりも強力なものが平気で湧き出てくる。砂蟲は幾度もグンルを丸呑みにしたり、押し潰したりした。屈強な姿のサンドゴーレムに殴打されたり、どこからか現れた盗賊に射殺されたりしつつ、その現実(幻覚)が覚めるのを待ち、グンルは淡々と進んだ。


「こうした耐久性を頼みに無理やり進むスタイルは、不死者の間ではごくありふれた手法……」空中に浮かんでいるドルシネアが言った。「例えば〈不死兵団〉の団長ヒュダルネスが、若かりし頃〈串刺し塔〉を攻略した話が有名」


 その集団については聞いたことがある。帝国を本拠地とする、不死者だけで結成された傭兵団だ。彼らを座員に引き込めば、もっと進むのが楽になるだろう。


「だけどよ、確か不死兵団は〈殲滅屋(スレイヤー)ギルド〉に滅ぼされたんじゃなかったのかい?」カルネアデスの声が聴いた。


「新帝国時代に移ってから再建された……今の団長は元オーマの聖職者、モーガンという人物と、ワタシのオリジナルである少女の記憶は言っている」


「〈不死殺し〉でも組織そのものは殺せなかったってことか? しぶとい奴らだぜ」


「伝統・実績のある団体はある意味不死性を持っている……それを利用しようという者たち、それに敬意を払おうという者たちが蘇らせる、例えば国もそう……帝国も、一度死んで蘇った」


 新旧二つの帝国はほぼ別物だ。英雄ヌミトル一世の後裔エルグ家からではなく、元老院が選出した有力者が新帝国皇帝に即位する。その種族も素性もさまざまだ。歴代の皇帝は大崩壊後の混乱をさまよっていた残党の寄り合いをまとめ上げ、コス大陸という迷宮を攻略してきた。多くの勢力の連合である新帝国の民は自分たちを、一枚岩ではなく流れる砂であるから強い、と称する。この地に住まう人々は放浪者としても迷宮守りとしても、グンルの偉大な先達だ。

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