第24話 綴り手ドルシネア
「どういうこった、おれはそんなものに加入した覚えはねぇぞ」
「自ら望んで加入したのではなく、定めによるもの……既にこの座員名簿に名前が書かれている」
ドルシネアが見せた紙には名前が連なっている。一番上に〈座長〉とあり、その後は塗り潰されていて読めない。続いて〈筆頭座員アーロン・アンダース〉〈綴り手ドルシネア〉〈蜃気楼のヴェイグ〉〈日ざらしのレーム〉その次に〈白浪のカルネアデス〉の名が確かにあった。
「あとは座長の承認があれば、カルネアデスもまた実体から分離し最果てへの旅の同伴者となる……それは今すぐにでも」
「いきなりそんな訳の分からないものになれって言われてもだな、おれは【汝〈白浪のカルネアデス〉の加入を承認する】分かった。これよりおれは、フュルギア一座の座員として、旅人グンルと同行することを誓う」
座長が承認し、カルネアデスは現実の存在ではなくなったようだ。実在しているほうの彼は「分離」というなら既に、この場にはいないのだろうか。
「その通り……実体の方のカルネアデスは、この場を立ち去った。我々がそちらの彼と出会うことはもうない。こちらの主観的に消滅したに等しい」
ドルシネアも、どこかに分離する前のオリジナルの個体がいるのだろうか。
「そう……ワタシも前に、グンルと会ったことがある。バカンにいたころすれ違った。話したり視線をかわしたこともない……それでも、ワタシはこの一座に加わる定め・資格を有していた。グンルが最果てへの途路にて出会う困難を、打ち破る力を持っていたために……だからこうして幻として分離し、随行している」
その時、鎧を纏った大型のスケルトンが、通路をばらばらになって吹き飛んできた。ウッドリーのヤギの、恐るべき力による突進を受けたからだ。どうやら、彼がこの迷宮を出るまでの間、このヤギたちが魔物の出現と同時にそれを打ち倒してくれるらしい。グンルはスケルトンの魔石や武具を回収する。
作業しながらドルシネアに、〈蜃気楼のヴェイグ〉という人物について尋ねた。名が名簿にあったが、その人物は知らない。
「既にグンルはヴェイグと会っているし、今もここにいる……でもヴェイグは存在しているけどしていないから幻視することもできない。レームみたいに魔術的な視覚をもってしても無理だし、カルネアデスの鋭敏な聴覚でも聞くことはできない。それでもヴェイグは確かに存在している」




