1/91
序文
殺さなければならない相手がいる。奪われたものを取り戻すために。握り締めた二振りの剣は、冷たい風に晒されながらも、熱を帯びているように思える。
自らの過ちにかたを付け、次に進むためには避けられない。狂ったあの〈流れ者〉と、会わなければならない。
いつになるか分からないが、奴は必ずやって来るだろう。こちらに来るまでに、どれほど正気を保っているか分からないが、奴は旅の果てに、この最果てへたどり着く。
これまで屠って来た相手と同じように、必ずやり遂げることができるだろう。太陽が再び昇ることと同じく、それは明らかだ。
今は待つしかない。奴が、放浪を終えるのを。