1年生12月 歳末緊急出動!? 石焼き芋事件簿
「芋ですっ!」
朝のホームルーム。
1年1組に入って来た担任が、とても朝の教室らしからぬにおいを嗅ぎつけ、すぐにアリスのもとにやってきた。
これはなんだ、と聞かれて、アリスは即答する。
「芋だと……。
どう考えても、これは芋というか……、ジャガイモだろ!」
「何が悪いんですか?
石焼き芋って、別にさつまいもに限ったことじゃないですよ」
「そんな話をしてるんじゃない!」
アリスの持っている芋は、どう考えてもじゃがバター。
よって、ジャガイモと言うよりもバターの匂いが黒板やら窓やら、下手をすると教室の外にまで漂っている。
「先生もどうですか。
石焼きジャガイモ」
「食うかっ!
てか、その石焼きジャガイモ、どこでもらってきたんだ!」
「もらってきたんじゃありません!
ちょっと早く登校して、後者の後ろで落ち葉を集めて火を付けてもらって」
「ちょっと待った」
もはや石焼きになっていない件。
それはともかく、当然、学校の敷地内でやってはいけないことだ。
「もらった、というと、他に協力者がいるんじゃないのか」
いつになっても始まらないホームルームに、1年1組全体がざわめき出す。
ところどころから「バーニングカイザーじゃね」とか声が上がるほどだ。
勿論、バーニングカイザーとなる生徒がそんな非常識な行為をするわけがないのだが。
「協力者は3年の先輩です。
3年2組の沙羅先輩。
少しだけサラマンダーに変身してもらって、落ち葉に火を付けて、二人で一緒に食べました!」
「はぁ……。
って、人を巻き込んで、こんな朝から迷惑なことをするんじゃない!
分かりましたね!」
「はい……」
アリスのじゃがバターは、1時間目が始まる前に全部食べることになったのだった。
アリスと沙羅の食べる量が全く違うので、沙羅のほうは朝ごはんのパンにバターを塗り過ぎたレベルで済んだわけだが……。
これで終わりではなかった。
その30分後。
――ジリリリリリリン!
――ウーウーウーウー!
――火災です!
火災が発生しました!
東領家中学校全体が騒然となる。
1年の教室が一番上なので、そこまでにおいは充満しないものの、下に行くほど煙に反応したのだった。
「なんか、嫌な予感がする!」
アリスは廊下に飛び出し、窓を開ける。
窓から強烈な煙が入ってくるが、その煙を辿ると、案の定アリスが石焼きジャガイモをやった場所だ。
空気が乾燥し始めたことで、消えたと思っていた火が消えていなかったのだ。
「私が悪いんです!
あ、でも、放火じゃないです!
ちゃんと、平和的な火の利用をしてます!」
アリスは、女子トイレの掃除用具入れの中からバケツを取り出し、蛇口をひねっていっぱいにすると、窓からバケツの水をひっくり返す。
当然だが、それで火が消えるはずがない。
「あぁ~ん!
どうしよう~!
私、やり直し中学生なのに、停学になる~!」
その時だった。
「水明の刀!」
輝くような巨大なマントを携え、精霊が宙に浮く。
その手が真っ直ぐ火に伸びると、その火を囲むように巨大な水柱が上がった。
「すごいすごいすごいすごい!
この学校、炎使いばっかりじゃないんだ!」
現れた精霊は、メルシーウンディーネ。
3年2組の砂田羽海が変身した姿だ。
「なんか、どんどん消えてく……。
この世界でも、異能力使える人がたくさんいて助かる……」
その時、アリスは大人の強そうな腕に掴まれた。
「なにが助かる、だ!
火は消えたから、授業再開だ!
何と言っても、アリス、お前が原因なんだからな!」
「はぁい……」
教科担任に腕を掴まれて教室に戻るアリスは、上がってくることのない煙の臭いを待っていた。
おいしいじゃがバターの香ばしさを思い出すように。




