1年生11月 食欲の秋のフードファイト
「食欲の、秋――っ!」
朝晩すっかり寒くなった11月。
給食には、キノコ汁うどん、栗やミカンなどの果物といった秋の味覚がほぼ毎日出るようになった。
アリスは、当然おかわり狙いで、東領家中学校1年1組はそれが分かっていた。
「ごちそうさまー。
おなかまだすいてるー」
給食の片づけが終わり、アリスが自分の席で大きく背伸び。
食べた後は、あくびが出る。
そこに、知らない女子生徒が1年1組の教室を覗き込む。
「アリス・ガーデンスっていうー、生徒はー、いますかー?」
「あ、私です!」
教室を覗き込んだのは、ぽっちゃりした女子。
見た目、アリスと同じようにお腹が出ているようだ。
「なんか、私に用ですか?」
「用があるのー。
なんかー、1年1組でいっぱい食べてるー、フードファイターだって聞いたからー」
「はい。
別にプロのフードファイターじゃないですけど」
プロのフードファイターがそもそもいるのだろうか、というのは置いておく。
「私も、3年2組でフードファイターなのよねー。
今度勝負しないー?
私、土山盛子って言ってー、名前に山盛り入ってるのー」
「じゃ、デブ山盛子先輩ですね!」
アリスよ。
その体型で人のこと言えるのか。
「とりあえずー、明日の3時間目の後にー、フードファイトやらなーい?
1年1組の教室で、5分間限定のフードファイトー」
「やりたいです!
だって、いっぱい食べられるじゃないですかー!
幸せですー」
アリスは、食べることしか考えてない。
「物は、アリスが決めていいよー」
「パンにしましょう!
食べた感じしますから!」
アリスの中では、何で勝負するか決まっていた。
明日の給食で何が出るか覚えているのだ。
~~~~~~~~
翌日。
「というわけで、デブ山先輩!
フードファイト用に、揚げパンいーっぱい仕入れてきましたー!」
「今日の給食じゃなーい?」
「いえいえー。
給食センターに言って、35個仕入れてきましたー」
これが嘘であることは、すぐに分かるわけだが。
「じゃあー、5分でー、多くの揚げパンをー、食べたほうがー、勝利!
負けたらー、今日の給食抜きー」
「分かりました、デブ山先輩。
スタート!」
アリスの号令がかかった瞬間、土山が両手で揚げパンを取り、口の左右から一気にガツガツ食べていく。
小麦の味など、全く気にしていないように、歯で揚げパンを砕いていく。
一方、アリスもアリスでパンを食べていくのだが、口が小さいので同時に二つは食べられない。
「むぐぉいどぇすね」
アリスは悟った。
本物のフードファイターはこういう食べ方をするのだと。
そして、見ていたクラスの生徒が、スマホを見ながら「5分経ちました」と告げ、楽しかった時間は終了。
「はい、アリスの負けー。
罰ゲーム~!」
二人ともずっと食べ続けていたのに、結果はほぼダブルスコア。
揚げパンの入った容器は、ほとんど残っていなかった。
「すごいです、先輩。
私、まだ食べられるんですけど、先輩はどうですか」
「無理かなー。
あのペースでー、10分食べ続けるのはー、辛いかも」
「そうなんですね。
私は、ずーっと食べ続けられるし、食べてるときは幸せですもの!」
その時、アリスも見たことがない先生が1年1組の教室を覗き込んだ。
「誰だ!
給食の揚げパンを今配膳室から持ち出した生徒は!」
「はい……」
アリスは、正直に手を挙げる。
手を挙げたところで、アリスが先生に怒られることに変わりはなかった。
「アリス。
あなたのおかげで、今日給食の揚げパンを食べられない人が何人もいるんですよ!
分かりましたね!」
その後、アリスはその日の給食を本当に抜きになり、翌日から4時間目の授業が終わる時まで配膳室が施錠されるようになったのは言うまでもない。




