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アリスは中学生~ダメ兵士のやり直し中学生ライフ~  作者: セフィ
アリスは中学3年生
29/30

3年生3学期 はじめての高校受験①

「さて、皆さん。

 いよいよ、自分の力で進路を決める時期に入りました。

 自分を信じて、自分を出し切って、中学を卒業してからの進路を掴み取ってください」



 東領家中学校3年1組に響いた、担任の声。

 周りがみな「はい!」と言う中、アリスは一人戸惑った。


「先生!

 やり直しで中学生をやってる私も、高校受験をしなきゃいけないんですかー?」


 クラスメイトの顔が、一斉にアリスに向く。

 浴びせられるのは、冷たい視線ばかりだ。



「アリス、か……。

 どういう取り決めになっていたか先生にも分かりません。

 ただ、高校受験は中学時代にしかできないですからね。

 最初に中学生をやったとき、高校受験ってやったことがありますか」


「えっとー……」



 ヤバい。

 私、14歳の時に『オメガピース』に入ったから、実は中学校を卒業していないんだった……。



「はい、よく考えたら中学を中退してました」


 中学を中退、というリアルの日本ではほとんど例がない経歴を堂々と口にした。

 そんなアリスに届くのは、クラスメイトの笑い声。


「それじゃ、やり直さなきゃいけないのは当然ですね。

 ということで、高校受験未経験のアリスにも、学校が決まるまで高校受験を受け続けてもらいます。

 費用は当然、『オメガピース』で負担してもらいます」


「異世界の組織、とばっちりで草……」


「アリス!」


 クラスが怒鳴り声と笑い声に溢れて、ホームルームはお開きになった。



~~~~~~~~



 『オメガピース』に戻ってきたアリスは、同じ部屋で暮らすトライブに事を告げた。



「3年間学校で勉強したのは、高校受験のため、というのもあるわ」


「否定しないんですね、ソードマスター……」


 強敵に挑むときの目で、静かに告げたトライブに、アリスは一歩足を引く。


「当たり前じゃない。

 私だって、剣の道を選んでなければ、生まれたエクアニアで高校に行っていたかも知れないから。

 でも、私は家で一人前の剣士になる道を選んだ。

 勿論、高校レベルの勉強は独学よ」


「えっ……。

 まさか、ソードマスターも高校受験未経験……」


 アリスの声に、トライブが静かにうなずく。


「私がまたそっちの世界に行けるのなら、高校受験を経験したい。

 入試問題に慣れてないから、スタートラインはアリスと一緒よ」



 ヤバい……。

 『オメガピース』が許してくれるか聞いただけなのに、ソードマスターを本気にさせてしまった。



「アリス。

 ()()、学校に転送されたら、学校の近くの書店で高校受験の問題集を買ってきて。

 国語、数学、社会、理科、英語。全部で5教科分。

 お金は行く前に渡すわ」


「私の分も、買った方がいいですよね」


「当然じゃない。

 敵を知らないで戦うのと知って戦うの、どっちのほうが勝ちやすい?」


「それは、そうですけど……」



 アリスが、高校受験なんて受ける必要ないと思い込んでいたことは、この数十秒でバレバレである。



「で、もし私がソードマスターに勝ったら、ソードマスターがやり直し中学生をやるんですか」


「やるつもりはないわ。

 私は、通っていた中学で成績トップだったから。

 ライバルに、テストで負けたくなかったから」



 そうだった。

 ソードマスターは、優等生だったんだ。

 というか、中学を卒業して10年経ってるけど、勉強する必要ないような……。



「とにかく、県立高校の入試まであと時間ないんでしょ。

 いま動かなくてどうするのよ。

 同じ問題集を買って、同じ予想問題を解いて、私とアリスのどこが弱点かを見ようかしら」


「はい……」



 完全に、ソードマスターに火を付けてしまった……。


 単なる相談が、思いもよらぬ方向に進んでしまった。

 アリスは、トライブが部屋を出た後、一人ベッドに座り込んで天を仰いだ。



「高校受験って、他の人との勝負だから、ソードマスターが本気になって当然か……。

 嫌だなぁ……」


 この時アリスは、本番で起きる奇跡を予想さえできなかった。

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