3年生2学期 アリス・ガーデンスと炎のプリンス③
「白い光が出てるってことは、何かに反応したね。
何か見えてきた?」
白い光を見つめ続けるアリスに、煌が語りかける。
「あの……。
文字が見えます……」
「文字?
なんか、ロボットとかメカとか……、巨大生物とかのシルエットじゃなくて?」
アリスの目の前から迫ってくる、漢字2文字。
時間をかけて迫ってくるさまは、まさに漢字の読み方当てゲームそのものだ。
「えっと……、なんだっけ……」
先にネタばらしをすると、いまアリスの目の前から迫ってきている文字は、中学卒業レベルならほとんどの生徒が読めて当然の言葉である。
「大きい……、いや、犬……。
あと、2文字目は、日って書いてチョンチョンチョンチョン?
そんな漢字です」
「俺、分からないよ。
てか、スポットリーダーの俺でも見えない、すごく小さい漢字じゃないかな」
そこに、隼徒が白い光のサークルの前に立ち、スマホのカメラを向けてズームする。
「たしかに、漢字だな。
普段、何十mもあるロボが、この時だけそんな大きくないシルエットで迫ってくるから、漢字も俺様たちが書くよりもずっと小さい文字なんじゃね?」
「そうです……。
すごく小さいです」
そうこうしている間にも、アリスの前に迫ってきた漢字はいよいよその目の前を通り過ぎようとしていた。
そこでようやく、アリスは手を叩いた。
「分かった!
太陽!」
「太陽……。
まさか、1年の陽と同じ属性ってこと?」
徐々に小さくなっていく白い光から目を離し、煌がアリスを見下ろす。
その横から、隼徒も顔を覗かせた。
「よっ、ソルアリス!」
「ソルアリス……。
なんかカッコいいです。
でも、アルターソウルの名前ってどうやって決まるんですか」
「言われなかった?
まぁ、動かない漢字だから、何も言わないかも知れないけど」
「言われませんでした。
でも、太陽っていう漢字は、太陽のはずです!」
その時、アリスの目に西日が差し込んできた。
手に持っていたミラーストーンが、光に照らされる。
「もし気になるんだったら、アリスも一度アルターソウルを呼び出してみない?
太陽という字が出てくるなら、もしかしたら陽とユナイトできるかも知れない」
「分かりました!
テクマクマヤコン、テクマクマヤコン……」
アリスは、いつの時代の魔法少女になりきろうとしているのか。
「あっ、ガチで白く光った!
これ、ワンチャン太陽に変身できるんじゃね?」
隼徒の声がプレハブ小屋に響いたところで、先程見たばかりの文字が光に乗ってアリスに迫ってくる。
漢字のシルエットが大きくなり、隣で見守る煌たちの目にも飛び込んできた。
「アリス。
これ……、太陽じゃないよ」
「えっ……?
太陽だから、炎に関係してるんですよね?」
「違うよ。
これは、太陽じゃなくて、大腸」
「だなっ!
大きいの間に点がないし、陽に見えた左側が月になってるし」
アリスは、ミラーストーンを持つ手を下ろし、その場に崩れ落ちた。
「だ……、だ……、大腸……。
私、やっぱり食べるキャラって思われてるんですね……」
その時、アリスが突然首の下あたりを押さえた。
食べたものが逆流してきそうだ。
「おい、アリス。
気分でも悪くなったのかよ!」
「なんか……、久しぶりに吐きそうです……」
その時、アリスの耳に低い声が響いた。
空から迫ってきた、「大腸」という漢字から話し掛けているようだ。
『炎のもとに、我が大腸の魂は生まれた。
食べ物を際限なく食べたお前に、大腸の炎を与える時が来たようだ……』
「えっ……」
煌が、清掃用具置き場からバケツを持ってきたところで、アリスがついに食べ物を吐き出した。
この日の給食をはじめ、休み時間に食べたお菓子が一気にバケツの中に吸い込まれる。
その全てが吐き出されたところで、アリスは空を見上げた。
「炎のスポットだからって、大腸の炎、大腸炎にしないでくださああああああい!」
3年生で活動できる数少ない部活でアリスを待っていたのは、あまりにも残酷な炎だった。




