3年生2学期 アリス・ガーデンスと炎のプリンス②
「いま、俺のこと、王子って言った?
俺、全然王子じゃないよ」
燃えるようなオレンジ色の髪を西日に輝かせ、煌がアリスに目線を合わせる。
「なんか、そう見えたんです。
私を守ってくれる王子様って。
この学校でイケメンって言われてる生徒は結構いるのに、なんか顔を見るだけで吸い込まれていきそう……。
なんというか、これ……」
煌が、アリスに見えるように首を横に振る。
そこに、隼徒の顔が割り込んできた。
「プリンスは俺様。
こいつは、ただのカイザー。
もっとも、石との運命的な出会いがなかったら、ただのおせっかい底辺だけどな」
「全然おせっかいに感じないです。
こんな私のことを気に留めてくれる……、なんかこう……、すっごく優しい人って感じです」
再びアリスが煌の目を見ると、煌はどこか笑っている表情だった。
「俺のこと、優しいって言われるの……、いつだって照れるよ。
俺、ただ普通にいいと思ってることをやってるだけなのに」
「はい、これがカイザーの正義感。
てか、こいつにあるのは優しさじゃなくて、正義感なっ!
ユーノー?」
再び迫ってきた隼徒の顔から、アリスは目線を反らした。
そこで、アリスは息を飲み込んだ。
「分かりました!
私がずっと気になってたのは……、たぶん『オメガピース』にこんな人がいないからです!」
「『オメガピース』?
たしか、君が元の世界で所属している、異世界の組織だよね」
「そうです!
なんか、みんな強くて、みんな真面目で、本気の目をしてないと怒られて……」
アリスは、真っ先にルームメイトの女剣士・トライブのことを思い浮かべた。
バトルに挑むときに見せる鋭い目を、遠く離れていても思い出してしまう。
「2年生の時、『オメガピース』から剣士が来たよね」
「はい、そのソードマスターです」
口に出していないのに、「その」という言葉をうっかり言ってしまうのが、アリスである。
「あの本気で戦う姿、俺も見習いたいよ。
なんか、俺は気持ちだけで戦ってるから」
「ソードマスターも、力よりもハートで戦います。
前に進む勇気は、ソードマスターもバーニングカイザーも同じだと思うんです。
でも、普段見せる優しさは、全然違う」
「そうかな……」
煌は一度、外を見た。
この日の空は、とても敵が襲ってくるように見えないほど、青く澄んでいた。
「アリスに対して、厳しく接すること。
時と場所によっては、それが本当の優しさかも知れない。
それに、俺は困ってる人を助けたくて……、そう思うことで優しくなってるだけだよ」
不意に、アリスの手が煌に伸び、引き寄せられるように握りしめた。
「そう言ってくれるだけでも、バーニングカイザーはとても優しいです……」
なんだろう、この温もり……。
ロボットになって炎を放っているけど、今はロボットじゃないのに、体がすごく温かい……。
はっ、これはもしかして、反応するかもしれない……。
「で、アリス。
本当は何しにロボ部に来た?
俺様たちのスパイはお断りだからな?」
隼徒が羨ましそうに見つめ、アリスへ白く輝く光のサークルを指差した。
「3年生、みんな部活引退して、いま3年生が活動しているのここしかなかったからです。
それに……、もしここで戦えるんだったら、厳しい『オメガピース』を辞めて、ロボで戦いたいです!」
そう簡単に、辞めるという言葉を口にするな。
「じゃあ、俺のスポットにミラーストーンを持った手を載せて、反応するかだね。
もし反応するんだったら、俺たちと一緒に学校と街の平和を守ろうよ」
煌がミラーストーンを持って、光のサークルに向かう。
新しい石を一つ作って、アリスに渡した。
「さ、この石を置いてごらん」
「はい」
アリスは、ミラーストーンをサークルの中に置いた。
1秒もしないうちに、アリスの手から光があふれ始めた。
「えっ……、これって……」




