3年生2学期 アリス・ガーデンスと炎のプリンス①
「あれ、2学期になったらみんな部活とかやらないんですね」
2学期が始まってだいぶ経った頃に、アリスは同じクラスの萌に尋ねた。
「もっと部活をやりたいけど、夏が終わったらみんな引退しなきゃいけないの。
アリスが通ってた、異世界の学校がどうだったか分からないけど」
「卒業前に『オメガピース』に入れられたから分からないです。
でも、なんかそろそろ試験だから、と言ってる先輩はいました」
「そっ!
その、そろそろ試験だからってこと。
定期テストだったら1週間前から部活休みになるでしょ?
それが受験だと、半年ぐらい前に変わるの」
アリスと萌が話している間にも、3年1組の教室から次々と生徒が帰っていく。
少なくとも、体育着やチームウェアに着替えている生徒は一人もいない。
「じゃあ、私、これから『オメガピース』に戻るまでの時間、すっごく暇になりますね」
「早く戻って、異世界で生活する時間を長くした方がいいんじゃない?」
「それはそうですけど……」
萌の言ったことは、限りなく正論である。
ほとんどの生徒が部活を引退したこの時期に、学校にいる意味などどこにもない。
「で……、でも……、この2年で、アフタースクールも大好きになりました!
いろんな部活にお忍びして……」
ここまで言い忘れていたが、アリスはあくまでもお忍びで部活動を楽しんでいただけである。
正式な加入手続きはしていない。
「……だから、その部活がなくなるの、本当に悲しいんです。
私は、たぶん高校に行くことはないはずなので……」
「受験がないんじゃ、アリスは暇だよね。
あっ、そうだ!」
萌は、窓から体を乗り出して、校庭に見えるプレハブ小屋を指差した。
「ロボ部は、まだ活動してるかな。
何と言っても、学校の平和を守る部活だから、そう簡単に引退させてもらえなかったって。
神門くん、勉強できないのに受験勉強の時間が取れないから、マジウケる」
「ロボ部……。
私が避けてきたところです。
ロボットの操縦なんて、ドジっ娘の私にはできないですから。
ゲーム感覚だったらやりたいですけどねっ!」
急に表情を変えるな。
「ゲーム感覚でできるんだったら、今からロボ部に行くのもありなんじゃない?
まぁ、アリスが神門くんに反応するアルターソウルを持ってなかったら、ロボ部員にはなれないけど」
「2組の、バーニングカイザーの人に反応する人ですか……。
大丈夫です! 任せてください!」
「何が大丈夫なの?
あそこのスポットから出てきたロボ、全部炎に関係しているけど」
「いいんですっ!」
アリスは萌から目を反らし、眼下に見えるロボ部のプレハブ小屋をじっと見つめた。
「私は、誰からも声を掛けてもらえなかった、イケメンスナイパー様を振り向かせた!
今はライフルマスターと、『オメガピース』でルンルン!
あの生徒だって、きっと反応するはず!
ありがとうございます!」
アリスは、すぐに体の向きを変えて教室を飛び出していった。
「その反応するじゃないから」
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「ピンポーン!」
ドアチャイムのないプレハブ小屋の前に、アリスの声が響く。
中から出てきたのは、煌ではなく、背の高い隼徒だった。
「あ、誰かと思ったら!
学年で一番天然なおバカキャラのアリス!
まさか、俺様に一目ぼれかぁ?」
「えっと……」
徐々に顔を近づけてきた隼徒に、アリスは一歩足を引いて言葉を溜める。
顔と表情、体つき。
その全てを見たところで、アリスの口が再び動いた。
「ライフルマスターよりはイケメンじゃないです。
ごめんなさい!」
「ガ――――――ン!
ガ……、ガチでそれ言ってるの?」
隼徒がバランスを崩し、プレハブ小屋の入口に倒れ込んだ。
その音で、煌が椅子から立ち上がる。
「隼徒、大丈夫かよ!」
すぐさま隼徒の手を掴んだ煌と、アリスは目が合った。
「なんか……、バーニングカイザーの人……、王子様のように見える……」




