3年生1学期 罰ゲームつき修学旅行④
アリス、体重が増えたために修学旅行居残りが決定する。
京都駅の新幹線改札口の前で、3年1組の多くの生徒がアリスに手を振った。
「えっ、本当に京都居残りですか?
ドッキリとかじゃないんですか?」
「ドッキリではありません。
これからアリスには、あるミッションで居残りをしてもらいます」
「ミッション……。
食べるミッションだったら、私、喜んでやります!」
アリスは、何故居残りになったか分かっていないようだ。
「京都の神社・仏閣を3つ、歩いて訪問してから帰ってきてください。
新幹線のきっぷは渡しましたので、ミッション終わり次第領家まで帰ってきてください」
「歩いて……。
つまり、体重を減らすということですね」
アリスの声に、担任は振り向かない。
こうして、アリスは一人、修学旅行の延長戦が始まるのだった。
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アリスはとりあえず、覚えている限りの清水寺へのルートを歩き出した。
鴨川を渡り、脇道に反れる。
「あっ、ここにお寺がある!」
アリスが見つけたのは、養泉寺。
普通の寺である。
さらに進むと、豊国神社。
「すごいすごーい!
ちょっと離れた有名な神社に行かなくても、京都にはお寺や神社がこんなにたくさんある!」
こうしてアリスは、京都駅から45分しか歩かずに、清水寺の前で担任からのミッションをクリアしてしまったのである。
勿論、全て中に入らずに。
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「さて……。
帰るまでが修学旅行です……」
アリスは、こともあろうに前日も立ち寄った清水寺周辺の店に次々と入り、お土産用のお菓子を買いあさる。
「ここまで行ったら、楽しむだけ楽しんで、体重100kgにして帰るーっ!」
二年坂を下りながら、食べ歩き。
その後、バスに乗って四条通沿いの繁華街へ。
「京都って、たしか湯豆腐がおいしいんですよね。
修学旅行に行く前にチェックして、班別行動に入れようと思ったらダメって言われたけど」
アリスは、有名な京料理の店に入る。
なお、修学旅行中に店に払ったお金の多くは、『オメガピース』でトライブの自腹になっていることは言うまでもない。
「あー、帰らなきゃいけないのが惜しい……。
こんなにおいしいものがいっぱいあって、見るところもいっぱいある。
京都って、本当に日本の観光地なんですね……」
湯豆腐懐石を食べて、息をつくアリス。
いよいよ修学旅行が終わるという現実に、アリスは戻りたくない。
「このままずっと、京都の修学旅行が続けばいいな……」
うつら……、うつら……。
「ぶぶ漬けでもいかがですか」
ん……?
ぶぶ漬け……?
私、まだ食べられ……。
「店を閉めるっつー意味どす」
「あっ……、寝ちゃった!」
アリスは、急いでバッグを持ち、会計を済ませて店を後にした。
もう夜の9時を過ぎている。
そもそも、15歳の女子がこんな時間に京都の街を歩いていいわけがなかった。
「ヤバい、ヤバい、ヤバい!!!!」
アリスは、見知らぬ街の地下鉄に飛び乗り、京都駅で降りた。
そして、案内を頼りに新幹線の改札へ急ぐ。
――のぞみ64号東京行き、ドア閉まりまーす! 安全、ヨシ。
無情にも鳴り響いた「乙女の祈り」。
東京に向かう最終の新幹線が、あと階段10段のところでドアが閉まる。
いくら検索しても、この先領家まで帰る手段は、夜行バスしかない。
「うわあああああああああん!!!!」
紙切れになった、団体用の新幹線のきっぷを持ったまま、アリスは一人ホームに崩れ落ちた。
食べて、食べて、食べまくった代償である。
当然、夜行バスで帰ることになったアリスは、「修学旅行に合流できなかった」あの生徒と並んで、学校じゅうでバカにされることとなったのだった。




