3年生1学期 罰ゲームつき修学旅行③
修学旅行2日目。
班別行動が始まった。
アリスの所属する班が、京都駅に向かう。
目の前には、萌が班のメンバーにスマホを見せながら歩いていた。
「白木の班、羨ましい。
アニメ漬けの1日にするとか言ってた。
アリスも、そっちに行けば太らずに済んだかも知れないね」
班長の男子・直人がアリスに告げる。
「日本のアニメを見続けられるんだったら、私、そっちに行きたいです。
でも、萌ちゃんのことだから、ほとんど動かないと思います」
「それを言い出したら、アリス。
八つ橋の予約をしたところばかり行くんだから、買ってる間とか食べてる間とか、アリス以外は全く動かないんだよね」
「あ……」
実はアリス、いっぺんに10個持ってしまうと見つかってしまうのを恐れ、清水寺の近くにある店、銀閣寺道にある店、というように何ヵ所かに分けて八つ橋を予約したのである。
それも、ほぼ予約分しか作っていない名店の八つ橋だ。
したがって、ルートも「ベタなルートですが」とアリスが断った上で決めていたのだった。
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清水坂を上がってるところで、アリスが止まる。
「アリス?
清水寺行かないの?」
「買うのが先ですよ~!
店を見ちゃったから、もうできてますか~って声を掛けるんです」
「アリス。
予約、何時だっけ?」
アリスは、同じ班の佳南に言われたところで、ポケットに入っているメモを見る。
清水坂の店は、10時に行くと書いてあった。
「10時です。
でも、店を見たから入りたいです」
「勝手な行動すると、夕方までにホテルに戻れなくなるよ」
「清水寺の上から食べたいんです!」
アリスは、そう言い終わるが早いか、店に入ってしまう。
「私が注文した分、できてますかー?」
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数十分後のアリス。
清水の舞台で、観光客に混じって四角い八つ橋を食べていた。
「あー、八つ橋おいしい!
こんなつぶあんたっぷりの八つ橋、初めて食べます」
「調べたら、結構有名な店だものね」
ちなみに、元祖西尾為〇商店という設定である。
そこに、佳南が近づいた。
「アリス。
みんなのぶんは?」
「あ……。
考えてませんでした」
10個全部独り占めするつもりだった、というような返事をして、これまで何度トライブに怒られたのか。
「アリス。
今回、俺たち、アリスを無事に学校に返したいんだ。
痩せないと、京都に居残りだろ?」
「あっ……。
そうでしたね。
うわあああああ、完全に忘れてたあああああ」
アリスは柵の上にバッグを置いて、八つ橋を班のメンバーに差し出す。
そこに、風が吹いた。
「あれ?」
アリスが振り向いた瞬間、バッグが清水の舞台から森に投げ出された。
柵から体を乗り出し、両手を震わせる。
「バッグかえしてえええええええ!」
アリスがどれだけ泣こうが、どれだけ叫ぼうが、緑のクッションに落ちたバッグは、やがて消えていった。
「あ、直人くん。
2組にいるバーニングカイザーの生徒、呼んでください。
ロボットじゃないと取れないです!」
「煌?
なんか、修学旅行棄権したって。
京都で降りるつもりが、寝過ごして東京に戻ったとか、さっきLINEで来てた」
「あ……。
これ、本当に清水寺の人に取ってきてもらわなきゃいけなそうですね」
そもそも、バーニングカイザーがあの場所に降りた時点で、山林から寺の境内まで一気に火が回るのだが。
「スタッフさん。
ここからバッグを落としました」
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「さて、アリス。
最後の体重測定の時間です」
修学旅行3日目、最終日。
京都駅に向かうバスに乗り込もうとした3年1組の列の中に、担任・中原が体重計を置いた。
「あ。
もう、こんな時間なんですね」
アリスは2日目、予定通り八つ橋10個を食べただけでなく、うどんも一人大盛りを3つ頼んでいた。
部屋に戻っても、コンビニでこっそり買っていたお菓子たち。
当然、基準の体重87.2kgより痩せているはずがなく……。
「92.4kg!」
「あっ、終わった……」
アリスは、体重計の上で呆然と立ち尽くした。




